『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』解説・あらすじ 映画レビュー

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』解説・あらすじ

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』とは

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』は、一人の若手企業弁護士が、大手化学メーカー、デュポン社を相手どって環境汚染に関して立ち向かっていく何十年もの闘いを描く。

本人も環境保護の活動家である『アベンジャーズ』シリーズのブルース・バナー/ハルク役のマーク・ラファロが、製作・主演。監督は、『エデンより彼方に』『キャロル』のトッド・ヘインズ。共演にアン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・キャンプ、ビル・プルマンなど。

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』あらすじ

オハイオ州の名門法律事務所で働く若手の企業弁護士ロブ・ビロットのところに、1998年、祖母の知り合いというウェストバージニア州の農場主が訪ねてくる。彼の農地で育てていた牛の大半が病死した。大手化学メーカーのデュポン社の廃棄物で農地が、汚染されているのではないかという依頼だ。しかも何人もの弁護士に断られていて、最後の頼みとして訪ねてきた。

企業弁護士として働くロブは、パートナーとなったばかり、大手化学メーカーのデュポン社は重要な顧客でもある。最初は断ったが、農地を訪ね、その様子に衝撃を受けた。手始めに資料を集めることにしたが、資料開示で届いた大量の書類の中に記されていた、“PFOA”という物質に気づく。それは有害物質の可能性が大きく、デュポンは、有害物質の存在と危険性を長期にわたり隠し、大気中や土壌に垂れ流し続けた疑いがあった。ロブは近隣の住民、7万人を原告団とする訴訟の準備をするが、それは彼にとって、難しい立場に立つことでもあった。

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』映画レビュー

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』に主演しているマーク・ラファロと言えば、『アベンジャーズ』シリーズのブルース・バナー/ハルク役でトップスターとして飛躍を遂げた。だが映画好きには、硬軟取り揃えた様々な役柄で忘れがたい印象があると思う。

まず、ロマンティックな映画での役柄で好印象がある。2012年のスチュアート・ブルムバーグ監督作品『恋人はセックス依存症』で『アイアンマン』シリーズのグウィネス・パルトロウと共演し、『恋人はゴースト(2005)』ではリース・ウィザースプーンと。

硬めの作品でも好演は続く。アカデミー賞関連作品として、『スポットライト 世紀のスクープ(2005)』、『フォックスキャッチャー(2015)』など。作品選びの上手さもあるし、作品内での真摯で真面目なイメージ、他の俳優たちの邪魔をしない存在感と、同時に相手役の良さを引き出す力は、マーク・ラファロ独特の持ち味だ。

そんな彼が、『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』では、主演及び製作も兼ねている。巨大企業に立ち向かった実在の不屈の弁護士を、彼にしか出せない味でひたむきに演じる。

最初は、自分には無関係という立場に立ちながら、祖母の願いを聞く形で、近所の農場主の話を聞きに行き、徐々に立場を変える決断を下す、難しい役だ。大企業相手の、迷路を徐々に進んでいくような戦いは、誰もが腰が引けてしまう。でも誰かが始めないと問題は、消えることなく、悲劇的な状況が広がる。ではだれが始めるのか。

マーク・ラファロという俳優に特別な思い入れがあろうとなかろうと、この作品にはしびれてしまう。ちなみに私は、『13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ(2004)』以来、大ファンなのだ。

(オライカート昌子)

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

現在、公開中
配給・宣伝:キノフィルムズ
© 2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
出演:マーク・ラファロ アン・ハサウェイ ティム・ロビンス ビル・キャンプ ヴィクター・ガーバー ビル・プルマン
監督:トッド・ヘインズ(『キャロル』『エデンより彼方に』)
2019年/アメリカ/英語/126分/ドルビーデジタル/カラー/スコープ/原題:DARK WATERS/G/字幕翻訳:橋本裕充
提供:木下グループ