『ブラックボックス:音声分析捜査』解説・あらすじ
ブラックボックス:音声分析捜査とは
航空機ジャンルの映画は傑作も多く種類も多いが、『ブラックボックス:音声分析捜』では、目新しく事故の音声分析官を主人公だ。新しいだけでなく、語り方もサスペンス濃度が強めで、刺激度も強い。本国フランスでも大きな支持を得た作品。
監督は、「パーフェクトマン 完全犯罪」のヤン・ゴズラン。主人公は『イヴ・サンローラン』のピエール・ニネ。
ブラックボックス:音声分析捜査 あらすじ
航空機事故の真相究明をブラックボックスの音声分析で解明する音声分析官マチューは、繊細な周波数の音まで聞き分ける有能で評価されていた。自分の能力には絶大な自信があったが、以前一度分析に失敗したこともあった。
そんな中、ヨーロピアン航空の最新型機がアルプスで墜落という大事故が発生。本来ならマチューは上官ポロックとともに現地に調査に行くはずだったが、なぜか外されてしまう。しかもポロックと連絡が取れなくなり、マチューはポロックの後を引き継ぎ、記者会見で調査結果を発表することになる。
コックピットに男が侵入した形跡を見つけ、テロリストの犯罪と発表したが、その後、乗客が残した留守電と、ブラックボックスの音の時間がズレていることに気づく。ブラックボックスは改ざんされているのではないかという疑いを抱くマチューは、ヨーロピアン航空の最新型機の自動操縦装置にミスがあったのではないかという線で調査を進める。ヨーロピアン航空を認証にはマチューの妻も関わっていた。マチューは旅客機メーカー、新型機の認証機関、自動操縦装置の開発会社の闇に分け入っていく。それは彼に危険をもたらすものだった。
ブラックボックス:音声分析捜査 映画レビュー
結婚相手のどこが好きなのか、その相手にしかない、どの部分が刺さって、一緒にいることにしたのか。
『ブラックボックス:音声分析捜査』は、航空機事故を調査する音声分析官が主人公の、極めて衝撃的なサスペンス映画であり、様々なテーマを持った豊かな映画でもある。この結婚相手問題というのも、映画の背後を支え、主人公の個性をくっきりと強く意識させるのに大きな手がかりとなる。
他の国の作品とは一味違う、フランス流サスペンスだ。航空機の認証プロセスの謎や、業界の秘められた秘密も緻密に描かれている。わかりやすいのに豊穣。ミステリーの仕掛けも幾重にもなっている。謎の深淵は深く、一種の恐怖感にも襲われる。
仕事には強いこだわりと、繊細な分析力を持ったマチュー。その妻は、新型航空機の認証機関で働いている。プロフェッショナルな夫婦だ。アルプスで墜落した航空機の調査を巡って、ある疑念を抱いたマチューは、その疑念に突き動かされ、立ちふさがる障害を跳ねのけるためなら手段を厭わない。ついには、プロフェッショナルな妻のキャリアを破壊しかねない禁じ手すら使ってしまう。
音への繊細さと敏感さ。さらにひときわ優れた分析力を持つマチューを周囲の人々は認めている。そして、恐れる。彼を脇道に逸らせるには相当な技量と悪辣さが必要となる。テロなのか、事故なのか、背後に陰謀はあるのか。
航空ジャンルものの作品としては異色でリアル。ゾクゾクさせられつつ、ため息をつかせ、音への深い集中が必要となる。滅多にない映画体験を味わえる。
ブラックボックス:音声分析捜査
配給:キノフィルムズ
© 2020 / WY Productions – 24 25 FILMS – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINEMA – PANACHE Productions
出演:ピエール・ニネ ルー・ドゥ・ラージュ アンドレ・デュソリエ
監督・脚本:ヤン・ゴズラン
2021年 / フランス / フランス語 / 129分 / ドルビーデジタル / カラー /
スコープ / 原題:BOÎTE NOIRE/ G / 字幕翻訳:橋本裕充
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
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