傑作!『アメリカン・ユートピア』レビュー

2度見た。

傑作は2度目もやはり、傑作だった!

配給してくれたパルコと

宣伝を担当するミラクルヴォイスに

万雷の拍手をお送りしたい。

ニューヨークのブロードウェイ。


そのハドソンシアターで「デイヴィッド・バーンのアメリカン・ユートピア」というショーがスタートしたのは、2019年の秋。

入手困難なチケットは、プラチナと呼ばれた。

2020年、世界的コロナ禍で続演を熱望されながら姿を消した幻のショー。

映画『アメリカン・ユートピア』は、

その傑作イベントをスクリーンに蘇らせたものだ!

演者はもちろん、ハドソンシアターの3階席まであふれる観客が

誰ひとりマスクをしていない風景に懐かしさと嫉妬を感じるだろう。

しかし、このコロナ禍にあっても「ユートピア」はスクリーン上では健在だ。

ユートピアという空間でさまざまな人種12人が

裸足でパフォーマンスを繰り広げていく。


「人間の脳は産まれた瞬間から錆びていく」という説を皮肉りながら、

環境への喜怒、人種問題、政治に対する呼びかけが興味深く語られる。

が、決して、面倒で、ややこしい、ガリ勉タイプのものではない。

全107分間の「圧巻」ショー!!! なのだ。

陣頭は、デイヴィッド・バーンが務める。

トーキング・ヘッズのリーダーだ!

知らない人がいたら、スマホでちょちょいと調べてから

映画館に行くことをオススメする。

デイヴィッド・バーンに終始身を委ねるクラウン役の男女ふたりが愛おしい。

白人のクリス・ギアーモと黒人のテンデイ・クーンバ。

ともに絶大なる人気を持つアーティスト・ダンサーだ。


さてさて、開演前のひと時、ユートピアの小鳥のさえずりが聞こえる。

音もなく、ユニークなイラスト緞帳がスーッと上がり、

この3人が登場する頃、あなたは観客の1人として

いつも間にやら魂を抜かれ、ハドソンシアターを浮遊しているはずだ。

これは確実。お約束する。

デイヴィッド・バーンの魅力が爆発する。

その先が読めない面白さ。

次の一手は? どんなパフォーマンスが展開するのだろう。

突然のマーチングバンド演奏に、ふと我に帰る瞬間が心地いい。


自然にリズムをとりながら、あなたが意識を取り戻した時、

あら不思議、ステージ上には12人が勢ぞろいしている。

てな具合だ。

兎にも角にも12人すべてが魅力的なのだ。

と、デイヴィッド・バーンは、無の境地でサーフボードに乗っかっている。

ラジオ体操のようにバランスをとる動きが滑稽だ。

クラウンふたりもそれを真似る。

狩りする姿、神と対峙する姿、なんと和式の襖を開ける姿まで。

あなたがどう感じるか、

何を意味しているものなのか、自分なりに感じ取ってほしい場面が続く。

厳選されたナイスな21曲をエネルギッシュに奏でながら歌い踊る、

こんなライヴ映画は一生に一度の体験となるだろう。


とくに、「Burning Down the House」を披露する12人、

そして場内の連帯感は、まさにいまの時代に必要とされているものだ。

このシーンに鳥肌すらなかった人とは話もしたくない! 笑

何としてでもヒットさせたい、ひとりでも多くに見てほしい。。。

そんな思いがこんな理想を生んだ。

まずは若き女性を動員して社会現象を得ること。

元ネタは2月中旬まで東京都現代美術館で開催された石岡瑛子展、

「血が、汗が、涙がデザインできるか」である。

資生堂、パルコのデザイン時代から、マイルス・デイヴィス、

グレイス・ジョーンズ、ビョーク、そしてフランシス・フォード・

コッポラとのジョイントに至るまでの全仕事を回顧する展覧会。


魅力の伝え方次第で何万人もの若き女性を集客し、

口コミの威力を思い知らされた大成功イベントだった。

その反響の大きさに、図録はいまもって入手困難だからね。

こうしたカルチャー感度の高い女性を起爆とさせるために、

東京都写真美術館のような芸術施設でも上映できないものか。

もう一つは、

記憶に新しい「ボヘミアン・ラプソディ」のような応援上映。

コロナ禍では難しい上映スタイルだが、足踏み、手拍子は

ギリギリ許してほしいものだ。


終演後、劇中に映し出されるひとりの観客が魂を抜かれた表情で

ハドソンシアターの天井を眺め続けるシーンが印象的だった。

ある意味で、このワンシーンが『アメリカン・ユートピア』の

全てを伝えられる場面なのかもしれない。

中止を言い出せず、暗中にさまよう東京オリンピック。

ならば以下は一案だ。

全世界に向けて、国立競技場の大画面に

映画『アメリカン・ユートピア』を流してみてはいかがか。


コロナで閉塞、混迷、分断する世界に、この映画の持つ

喜びと幸福に満ちたメッセージは大いに役立つはずだ。

私はあと3回見る。

(武茂孝志)

余談だが、スパイク・リー監督が撮った

この『アメリカン・ユートピア』をヒントにしたであろう

短編がNetflixで配信された。

タイトルは、「隔たる世界の2人」。

先日の第93回アカデミー賞で見事短編映画賞を受賞している。

『アメリカン・ユートピア』体験後、これまた見るべき映画である。

映画『アメリカン・ユートピア』

2021年5月7日(金)より

TOHO シネマズ シャンテ/渋谷シネクイント他全国ロードショー


※ 緊急事態宣言下、公開日が延期される劇場もあります。

ご確認の上、お楽しみください。

監督:スパイク・リー


製作:デイヴィッド・バーン、スパイク・リー


出演ミュージシャン:
デイヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、

グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ジャルモ、ティム・ケイパー、テンダイ・クンバ、カール・マンスフィールド、

マウロ・レフォスコ、ステファン・サンフアン、アンジー・スワン、

ボビー・ウーテン・3世

2020年/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/5.1ch/107 分/

原題:DAVID BYRNE`S AMERICAN UTOPIA/

字幕監修:ピーター・バラカン

ユニバーサル映画

配給:パルコ 宣伝:ミラクルヴォイス

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