『デッドプール』映画レビュー

しゃべり過ぎでお茶目だけど、デッドプールはつい応援したくなるヒーローだ

     © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

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ヒーローは、静かでシリアスで常に正しい。そんなありきたりのイメージを、ニューヒーローがぶち壊す。やり過ぎ、突っ込みすぎ、しゃべり過ぎ、戦いのシーンも楽しみ過ぎ(当然面白いシーンとなる)の、元傭兵で不死身の身体を持つデッドプールだ。

オープニングタイトルも個性的だ。ティム・ミラー監督自身、『ドラゴン・タトゥーの女(2011)』や、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013)』などのオープニングで名を轟かせているのだから、自身の映画で力を入れないわけがない。

ヒーローは、最初タクシーに乗っている。作りこまれた熱いオープニングを見たせいで、わたしたちの期待も大きく膨らんでいる。そんなのはどこ吹く風で、ヒーローは観客に向かって、ぺちゃくちゃしゃべりながら、タクシーの窓についた汚れをふき取ったり、さびしいので前の席に来てしまったり、マスクの内側の顔を見せてくれたり忙しい。

ちなみに、デッドプールが自ら語るスタイルは、エンドクレジットの後の、おまけシーンまで続く。彼がタクシーに乗っていたわけは、自分を今のような姿にした男をつかまえ、元の姿に戻してもらうためだ。

デッド・プール(ウェイド・ウィルソン)は、アメコミのマーベル誌出身。マーベルのヒーローは、まじめというよりは、性格に一癖あるキャラの方が多い。『アイアンマン』のトニー・スタークは、自己顕示欲の強さが尋常ではなかったし、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースは、自分にとっての正しさを追求する姿勢が群を抜いている。

スパイダーマンは、ぼやいたり、ちゃちゃを入れながら戦う。それが一つのチャームポイントだ。そのスパイダーマンの系譜をデッドプールが引き継いでいる。コスチュームが手作りのところや、大きな悲劇に見舞われたところも似ている。スパイダーマンのピーター・パーカーが、かわいげのある大人になって、過激度を増したらこうなるだろうというイメージをさらに100倍したようである。

どのヒーローよりデッドプールを応援したくなるのは、主演のライアン・レイノルズ、ティム・ミラー監督をはじめとしたスタッフ・キャストの愛情を感じること、いい物を作りたいという強い思いが伝わってくるからだ。

R指定映画で(日本ではR15)、アメコミヒーロー映画としてはありえないほどの低予算(『シヴィル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の4分の一)、一度はポシャった企画。そんなマイナス面にもかかわらず、R指定歴代一位の興行収入を上げ、全米興行成績も、今現在年間二位である。『デッドプール』は、他の映画とはちょっと毛色が違う。そのあたりを、ぜひ映画館で確かめて欲しい。

(オライカート昌子

デッドプール
6月1日(水)より、TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
監督:ティム・ミラー
出演:ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T.J.ミラー、ジーナ・カラーノ
2016年/アメリカ/108分/カラー
配給:20世紀フォックス
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/