『雨を告げる漂流団地 』みどころ解説・あらすじ・映画レビュー

『雨を告げる漂流団地』みどころ解説・あらすじ

雨を告げる漂流団地とは

『雨を告げる漂流団地』が全国劇場とNetflix(独占配信)で公開中です。ダイナミックで繊細な映像と心に残るストーリー。ポストジブリとも呼ばれるスタジオコロリドのアニメーション映画です。

『雨を告げる漂流団地』は、2011年に設立されたスタジオコロリドの、『ペンギン・ハイウェイ(2018)』、『泣きたい私は猫をかぶる(2020)』に次ぐ、長編第三作目。ちなみにスタジオコロリドのコロリドとは、ポルトガル語で「色彩に富む」という意味があるそうです。,

『雨を告げる漂流団地』の監督は、『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康。『ペンギン・ハイウェイ』は、内外で高い評価を得ました。日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞、ファンタジア国際映画祭今敏賞(ベストアニメーション賞)を受賞しています。

『ペンギン・ハイウェイ』は原作付きの作品でしたが、『雨を告げる漂流団地』はオリジナルストーリーとなります。

雨を告げる漂流団地のみどころ その1 ダイナミックな映像美

アニメーション映画ならではの、映像の自由自在も見どころの一つ。アクションシーンでの出来事のダイナミックな要素は、アニメでしか描かれないもの。ラスト近くの海の水が光のシーンは、一分間に半年以上かけているそうです。

みどころ その2 郷愁を誘うリアルな団地、古びた建物

リアルな描写もアニメーション映画だからこその魅力があります。団地のリアルな感触は、監督が自身が団地に泊まり込んだ体験から描写されています。

デパート、遊園地、プールなど、そのほかにも郷愁を誘う描写に注目です。

みどころ その3 心をさっぱり洗い流してくれるような気持ち良さ


水の描写などの迫力が大きな見どころの一つ、『タイタニック』を思わせる描写もあります。

『雨を告げる漂流団地』の主題の一つに古い記憶への愛とそれを手放す勇気があります。愛着のあるものにしがみつきたい、反対に、絡んでくるような古い傷に縛り付けられている。

いろいろな感情を掻き立てる。古いもの。それを一気に洗い流すような描写と主題の調和も見逃せません。

みどころ その4 子どもの心を思い出させてくれる


夏休みの小学生というと、思い浮かべやすいイメージがありますが、『雨を告げる漂流団地』の場合は、そのありきたりのイメージとは一味違います。

「仲良く」ということがない。むしろ表面上はとても仲が悪いのです。内面の傷つきやすさを覆うように、強気になってしまう。そんな彼らが少しづつ素直に自分の気持ちに気づき、それを表現していくようになっていきます。

大人になると反対に、表面上は優しかったり思いやりを示すけれど、内面では表現できない感情が渦を巻いていることもあります。そんな時、いつも喧嘩ばかりしている『雨を告げる漂流団地』を思い出すのはいかがでしょうか。

雨を告げる漂流団地 あらすじ

航祐と夏芽は、団地に住み、姉弟のように仲良く育った。団地が取り壊されるため引っ越ししたせいもあり、二人の関係は以前のようではない。

夏休みのある日、友達と団地探索へ向かった航祐は、そこで夏芽が、押し入れに入っているのを見つける。どうやら、彼女は暇さえあれば、団地に入り浸っているらしい。そこには、夏芽が”のっぽくん”と呼んでいる謎の少年がいた。果たして彼は噂のオバケなのだろうか。

その後、不思議な現象が次から次へと起き始める。ふと気づくと、団地のその棟が海に浮かんでいた。それは夢ではないらしい。海には、団地だけではなく、他にも不思議なものが漂流していた。食べ物探しのために漂流している別の建物に向かうが、彼らに乗り越えなくてはならないものは他にもたくさんあった。のっぽ君とは何者なのか? 航祐と夏芽たちは家にたどり着くことができるのか。サバイバル生活がスタートする。

雨を告げる漂流団地 映画レビュー

団地が漂流する。『雨を告げる漂流団地』の奇想天外なストーリーに驚いてはいけない。『雨を告げる漂流団地』には、さらなる驚きが満載だ。その驚きには、不思議な力がある。古いものに対する愛おしさ、新しい一歩を踏み出す勇気など、見た後に残る余韻も大きい。

冒頭の、団地の描写の美しさは、抜群。今は古びて壊されるのを待っている”お化け団地”の在りし日の姿が躍動的に描かれる。そのシーンだけでも満足感がいっぱいと言ったら、気が早すぎるだろうか。

その団地で育った、小学6年生の航祐と夏芽。団地が壊されるため、それぞれ別の家に移ったばかり。兄弟同然に育ったのに、今は接触がない。航祐の方は、夏芽と仲直りしたいのだが、きっかけも度胸もない。

航祐と友人たちは、解体間近の”お化け団地”に忍び込み、探索を試みる。そこに居合わせた同級生の女の子も一緒だ。航祐の住んでいた部屋までたどり着くと、そこには思いがけない誰かがいた。

やがて、小学生の単なる冒険というには、危険過ぎる漂流がスタートする。食べ物もやがて尽きる。けんかをし、命ギリギリの大怪我にも見舞われる。それ以外の危機もてんこ盛りに襲ってくる。

不思議な出会いや、かつて失ったものに再び触れ合う瞬間もある。果たしてこれは夢なのか、別世界に接続してしまったのか。

刺激度満載の冒険は、自分が抱え込んだ古い愛おしい”お荷物”をゆっくりと手放し、新たな日々へと導いてくれるような感慨に導いてくれる。

(オライカート昌子)

長編アニメーション映画『雨を告げる漂流団地』
Netflix全世界独占配信中&大ヒット公開中
©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
出演:田村睦心 瀬戸麻沙美
村瀬歩 山下大輝 小林由美子 水瀬いのり 花澤香菜 島田敏 水樹奈々
監督:石田祐康 脚本:森ハヤシ/石田祐康
音楽:阿部海太郎
主題歌・挿入歌:ずっと真夜中でいいのに。
企画:ツインエンジン
制作:スタジオコロリド
配給:ツインエンジン/ギグリーボックス
製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
©コロリド・ツインエンジンパートナーズ