『オンリー・ザ・ブレイブ』映画レビュー
ラストパートが全て。でも、それがなくても成立する贅沢な作品
『オンリー・ザ・ブレイブ』は普通の男たちが、まっとうに仕事に向かっていく姿を描いた感動アクション大作。映画的感興に溢れたシーンがいくつも用意されていて、エンターテイメント的にもサービス精神が旺盛。最後には大きく心がかき乱される。
彼らはアリゾナ州プレスコット市の森林消防職員で、山火事に立ち向かう仕事をしていた。だが、ホットショット(国レベルで動く精鋭部隊)の補佐をするだけという立場上、リーダーのマーシュ(ジョシュ・ブローリン)は、町に山火事が襲い掛かる前にくい止める方法を知っていても、行う権限がなかった。ホット・ショットたちにアドバイスしても、まともに聞いてもらえない。止めることができたはずなのに、町が焼けていくのをただ眺めるだけだった。
マーシュの秘策は、火事が広がる前に燃料となる森林をあらかじめ燃やして火事の燃料切れを図り、方向を変えること。その方法には過酷な作業が必要となる。事前に厳しく膨大な訓練も不可欠だった。秘策を持っている以上、マーシュ及び、隊員たちはなんとしてもホット・ショットにならなくてはならない。だが、単なる市の消防職員たちが、ホット・ショットへの道に挑むのは、前代未聞だ。果たして彼らの悲願は叶うのか。
酒と麻薬に溺れた生活をしていた青年ブレンダン(マイルズ・テラー)が、心を入れ替え、チームへの参加を志す戦いがサイドストーリーだ。不可能にしか見えなくても、隊長は彼にチャンスを与える。普通だったらこれだけでも一本の映画ができるだろう。あり得ないように見える話でも、これは実話の映画化だ。ゆえに力がある。
マーシュ演じるジョシュ・ブローリンは、今最高に波に乗っている。ケーブルを演じている『デッド・プール2』はもちろん、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、敵役サノスを演じて映画を乗っ取ってしまっている。『オンリー・ザ・ブレイブ』は今の彼の決定版的作品だ。熱い反面物静か。心が強く頑固だが心優しい。そんな男が映画の中で息づいている。
ラストのクライマックスは絶対に必要なのだろうか。なくても映画が成立するぐらい、十分に満足させられた。ジェフ・ブリッジスが、アカデミー賞を射止めた『クレイジー・ハート』以来のカントリーソングをほぼフルで歌ってくれるのは、贅沢の極みだし、隊長の妻を演じるジェニファー・コネリーは、お飾りどころか、強い存在感を持っていて、しかも見とれるほど美しい。一つ一つのシーンが愛情をこめて作られているのを深く感じた作品だった。
だが、やるならとことんやり尽くさなくてはならない。実話の映画化なので、端折るわけにはいかない。全てはラストの一瞬のためにある。
オンリー・ザ・ブレイブ
© 2017 NO EXIT FILM, LLC
6月22日(金) TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
アメリカ映画/134分
監督:ジョセフ・コシンスキー『オブリビオン』『トロン:レガシー』
キャスト:ジョシュ・ブローリン/マイルズ・テラー/ジェフ・ブリッジス/テイラー・キッチュ/ジェニファー・コネリー
配給:ギャガ
公式サイト http://gaga.ne.jp/otb/