映画『虹色デイズ』映画レビュー

ヒーロー映画に悪人が欠かせないように、青春映画に恋は欠かせない。少女コミック原作ならなおのこと。『虹色デイズ』にも、恋は描かれている。でもありきたりな胸キュンストーリーにはならず、高校時代特有のコミュニュケーションのぎこちなさや未熟さの描写の印象が強い。

『虹色デイズ』は、少女マンガなのに、男子高校生の青春を描いている。映画化したのは、『荒川アンダーブリッジ』などの飯塚健監督だ。ちょっと意外な組み合わせが、類似作品とのくっきりとした違いをもたらしている。

特別オシャレな生徒はいない。スクールカーストもないし、オフビートなお笑い担当生徒もいない。暴力もない。普通の高校生の日常が描かれている。けれど、どこか透明感があってさわやかさもひときわ。これは飯塚監督の手腕だ。

高校二年生の仲良し男子四人組。彼女がいる恵ちゃん、モテモテのまっつん、つよぽん、そして、普段は元気で誰からも愛されるなっちゃんは、通宅途中でみかける安奈に片思い中。でも気持ちを伝えられないどころか、ラインも交換できない。周りはけしかけて、連絡先を聞くまでは、お昼をおごらせることにする。

ついに連絡先だけは交換できたものの、安奈のそばにいつもいるまりちゃんは、なっちゃんを毛嫌いしている。安奈に誰も近寄らないようにいつも見張る始末。だからなっちゃんの恋はいつまでたっても進展しない。一方、まっつんは、つんけんしているまりちゃんの存在が気になってくる。ついには、たくさんいる女子のラインを全て消して、まりちゃんにアタックするが、うまくいくはずもない。月日はあっという間に経ってしまう。彼らの恋はどこへ向かっていくのか。

登場人物の中でも、いつも容赦なく怒っているようなまりちゃんの存在は強烈だ。彼女ほどとは言わなくても、登場人物の誰もがが他人との距離のとり方、思いへの伝え方が上手いほうではない。うまくいかない理由も解決法も簡単には提示されない。コミュニュケーションをとる方法を学んで会得するには、ジャングルを潜り抜けるように少しずつもがくようにして進んでいかなくてはならない。

恋をするのも、青春時代を生きるのも、そして人とコミュニュケーションをとるのも冒険なのだ。年を取って経験を積めば、多少は上手くなるかもしれない。けれど私も含めて、大概の人はまだ冒険の途上にいる。

 (オライカート昌子)

虹色デイズ
(C)2018「虹色デイズ」製作委員会 (C)水野美波/集英社
7月6日(金)全国ロードショー!
監督;飯塚健
原作:水野美波
『虹色デイズ』(集英社マーガレットコミックス刊)
キャスト;佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)なっちゃん(羽柴夏樹)
中川大志 まっつん(松永智也)
高杉真宙 つよぽん(直江剛)
横浜流星 恵ちゃん(片倉恵一)
吉川愛     杏奈(小早川杏奈)
恒松祐里 まり(筒井まり)
堀田真由 ゆきりん(浅井幸子)
坂東希     千葉ちゃん(千葉黎子)
山田裕貴 筒井昌臣
滝藤賢一 田渕先生
2018/日本映画/青春・ラマンス/109分/配給:松竹
公式サイト http://nijiiro-days.jp/