『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』映画レビュー

明日の元気に直接作用!期待度ナンバーワン映画
爽快、痛快、満足感。日本映画は奥が深い。ひたすら楽しい映画もあれば、考えさせられる映画もある。テーマも描き方も盛りだくさんだ。『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』は、楽しいうえに、ちょっぴり考えさせられる。明日の元気に直接的に作用してくれる効果もある。

市原隼人主演の『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』は、コメディドラマ「おいしい給食」の劇場版第3弾。ドラマのシーズン終了後、劇場版が公開される。だが、ドラマを見ていなくても、劇場版の前2作品を見ていなくても、おもしろさは損なわれない。

時は、1989年。函館の忍川中学に転勤した教師の甘利田幸男(市原隼人)にとって、おいしい給食を食べることは非常に大切だ。彼が忍川中学にやってきた理由は、ただ一つ。イカメシが、給食メニューに登場するのではないかという、期待だ。

それから2年経っても、イカメシ給食は、やってこない。それでも毎日の給食は最高。食のライバル、生徒の粒来ケン(田澤泰粋)との給食バトルも、生活の張りだ。

忍川町では町長選挙を前に忍川中学が給食完食のモデル校に選定され、政治利用されようとしていた。それを不穏に感じた甘利田は、おいしい給食を守るべく立ち上がる。

『おいしい給食』の一番の見どころは、甘利田先生の給食パフォーマンス。コメディはこうでなくちゃ!の見本だと思う。複雑な会話や、ツッコミやボケなど、高度なコメディ技に浸食される前は、動きとタイミングで見せるこういうコメディシーンが主流だった。

『おいしい給食』のパフォーマンスは、リズムと絶妙な動き。品もいい。歌舞伎や狂言の楽しい場面に通じる。かつての日本のコメディ文化の復権だ。それにしても、これだけのことができる市原隼人は、どんなトレーニングをしているのだろう。センスとリズム感は、持前のものだとしても、素晴らし過ぎる。

かつて日本映画には、『寅さん』シリーズがあった。ストーリーには型があり、映画自体のクオリティも面白さも期待を外さない。その後、『釣りバカ日誌』シリーズが送り出されたが、長続きはしなかった。

そんな定型プログラムピクチャーが、新たに出現するとすれば、『おいしい給食』がダントツの期待度ナンバーワンだと断言しよう。面白くてホロリ、ちょっぴり考えさせて、極め付きのお約束シーンがある。そして日本各地を巡る。

『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』には、古き良き日本(映画)と、新しき良き日本(映画)が、息づいている。

(オライカート昌子)

劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ
2024年5月24日(金)劇場公開
(C)2024「おいしい給食」製作委員会
2024年製作/111分/G/日本
配給:AMGエンタテインメント
監督:綾部真弥
脚本:永森裕二
製作総指揮:吉田尚剛
出演:市原隼人、大原優乃、田澤泰粋、栄信、いとうまい子、六平直政、高畑淳子、小堺一機、石黒賢