その彼が満を持して臨んだのが『探偵はBARにいる』(橋本一監督)。東直己原作「バーにかかってきた電話」の映画化で、大泉洋は札幌“ススキノ”の探偵に扮して、殴られ蹴られ、反撃し、雪の中に埋められ、ギャグもかましての大奮闘を見せる。大奮闘なのに肩の力が抜けている。ボケても転んでもオネエチャンといちゃついてもわざとらしくなく、観ていて非常に心地よい。
腰が軽く前のめりな“俺”とは対照的な、のんびりやの運転手で相棒の高田に扮した松田龍平が絶妙なたたずまいを見せ、この映画にさらに心地よいリズムを加える。このコンビがオンボロ車を猫なで声であやしながらの出発シーンなど、何度見ても人間的で愛らしい。シリーズ化が決定したのも当然だろう。
なんといってもこの映画の最大の見どころは、大泉洋が、主人公を長年演じてきたように楽々とこなしていることにある。身体の凝りをほぐしてくれるような、こういう“エッジの効いていない”主人公の復権を心から歓迎したい。大泉洋こそは、日本映画に久々に現れた正統派ヒーローであると言い切ってしまおう。大泉洋の真の当たり役の誕生である。
(内海陽子)
探偵はBARにいる
オフィシャルサイト http://www.tantei-bar.com/