マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の画像
(c)2011 Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute
アカデミー主演女優賞を受賞したばかりのメリル・ストリープが、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』のプロモーションで来日しました。メリルとは『マンマ・ミーア』でも組んだフィリダ・ロイド監督も同時に来日しました。その模様をレポートします。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙とは
イギリス初の女性首相となったマーガレット・サッチャーの生涯を新鮮な視点で描いた作品。マーガレット・サッチャー元首相は、1979年から1990年までイギリスの首相を務め、その強い意志力を持ち、鉄の女と呼ばれました。

そのマーガレット・サッチャー元首相の生涯を描いた映画が、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』です。監督は『マンマ・ミーア』でもメリル・ストリープと組んだ、フィリダ・ロイド。女性監督独特の感性で描かれており、特にサッチャーの衣装のカラーが彼女の心境の変化にあわせて変わっていくところなどに注目。

マーガレット・サッチャーさんの女性としての魅力

お二人は、「今回この日本にこの作品を持って来ることができてとても誇りに思っています」と挨拶。サッチャーを演じられる上で一番苦労した役作りは?という質問には、「英国人から見れば、アメリカ人である私はアウトサイダーです。そんな私が、イギリスで愛され同時に批判され嫌われている人物を演じることは難しいことでした。

それがこの役の特徴だと思います。また俳優として求められたのは、いかに自分にフィットさせるかでした。映画の一部では、年老いた彼女の日常が描かれていますが、彼女の毎日の生活は殆ど知られていません。そういう部分もあり、その二つを融合させていくのが難しいことでした」と答えていました。

メリル・ストリープさんとフィリダ・ロイド監督の画像サッチャー首相は、カリスマ政治家というだけでなく女性としても魅力的です。特にどのような部分を女性の魅力としてお感じになられたのでしょうか?という質問に、メリル・ストリープさんは、「たとえ首相になっても女らしい部分を失わなかった部分が魅力的です。男社会に生きる政治家として、女らしさを捨てたいという誘惑はあったと思います。

でも彼女はいつもハンドバックを持ち、ヒラヒラとしたブラウスを着ていた。ですが、自分に許さなかった女らしさもありました。涙や笑いなど、女の持つ弱々しい部分は見せなかった。だからこそ鉄の女(アイアンレディ)と呼ばれたのだと思います」とのこと。

監督は、「マーガレット・サッチャーの魅力は、彼女が決して自分の出身、つまり生まれを忘れなかったことだと思います。大勢の中でも一番重要ではない人々のことを共感を持って接していた。そういう普通の人の気持ちがわかる人だったということが魅力ではないかと思います」と答えました。

同時代のしかも存命中の人物を演じるのは難しくはなかったですか?という質問に、メリルさんは、「はい。嬉しいことに彼女はご存命です。正確であること、真実に近い役作りをすることに関してとても責任を感じました。想像して演じる場面でも同じでした。彼女は、公な人物で政治家ですので、その人生に私達一人ひとりの人生を重ね合わせることができるような演じ方をしたいと思いました。

普通の伝記映画は、この人はこのように成功したというふうに描かれることが多いのですが、この映画は違います。彼女の日常を見つめるように描かれています。彼女がどのように決断を下し、どのように困難を乗り越えたのか。このアプローチはこの映画をとても興味深くしています。またこの重要な人物の人生を振り返ることでユニークな学びの機会をもたらしてくれました。私自身も何かを学んだと思いますし、親に対しても、親と同世代の人々にに対しても」と答えていました。

撮影の最初に党内で支持を失う大事な場面を撮った

一番こだわったシーン、難しかったシーンは?との質問に、監督は「メリルさんでしたら、最初の三日間と答えるのではないかと思います。この映画は、作るのにとても時間が限られていたために、一番難しいシーンを最初に撮ってしまったんです。党内で自分の支持を失っていく場面です。メリルさんの想像力と、できるところまでやってしまおうというギリギリの端まで描ききる加減がわかっていらしていられたので、できたことだと思います」

メリルさんは、「あれは撮影開始二日目でした。映画は一貫性を持って語られるタイプのものではなく、彼女の記憶から描かれているので、まだその時点では、どのように描かれるのかよくわかっていませんでした。

その場にいる俳優のだれひとり知っている人はいませんでした。本当は私の一番親しい人のはずなのに、その場で初めて出会ったのです。ですから想像力を使って、どれほど近しい関係なのかを演じたのです。しかもあの場面は、彼女の人生の中でも重要でした。

メリル・ストリープさんとフィリダ・ロイド監督の画像アドバイザーとして実際にあの場面に同席していた人がいらして、雰囲気を覚えていたので助かりました。この映画はサッチャー元首相の敵だった人も、側近で右腕だった人も、たくさんの方がアドバイザーとして参加していて、助けていただきました」

日本の首相にアドバイスをするとしたらという問いには、「演技について知りたいならぜひ聞きに来てください」という答えが。また、アカデミー賞を同時に受賞したメーキャップアーティストについては、

「彼はロイ・ヘランドと言います。またプラスチックを使うメーキャップアーティストは、英国のマーク・クリアーと言って、二人でつくり上げるメーキャップは、全く縫い目がないくらいの技術でした。この映画で描かれるマーガレット・サッチャーさんの40年間の外観を作っていきました。

ロイと私は37年間一緒にやってきました。私が演劇学校を出て、初めて出たリンカーンセンターの舞台が最初でした。彼はキャラクターから外観を作るというユニークな方法でメイクを考える方です。

メイクをしたサッチャーさんの姿を最初に見たときはどう感じましたかという質問には、「見たことのある人がいるなあという感じでした。年老いたメイクをした姿は、自分の父を思い出しました。父とマーガレット・サッチャーのミックスがいるような感じでした」と答えていました。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
2012年3月16日(金)より、TOHOシネマズ日劇 ほか全国ロードショー
公式サイト http://ironlady.gaga.ne.jp/