『決戦は日曜日』映画レビュー

こんなに楽しめる社会派・政治系コメディ映画は、見たことない。笑えるだけではない。今の日本の政治状況を上手く表している。政治は、そんなことになっていたのかと、納得してしまうほどに。笑いに乗せて問題を提起するだけでない。閉塞した状況の脱出手段も描いているところが痛快だ。

主演に窪田正孝と宮沢りえ。窪田正孝は議員秘書、宮沢りえは、病に倒れた父の地盤を引き継いで衆議院議員選挙に立候補する二世議員候補、二人とも、新境地を拓くべく、素晴らしい演技を見せてくれる。

前半は、新人二世議員候補の有美のやる気ばかりが空回りして事務所を掻き回す面白さと、周囲のゆるさとのギャップに注目だ。有美は、最初の登場からして派手だ。颯爽と姿を現すと、自信満々に事務所の汚れを指摘。最初の会見では、読み違いと失言を繰り出してくれる。選挙違反もやってのける。世間知らずのお嬢様気質と老獪で慣れあいの政治の世界とのギクシャクした関係が、これでもかというほど、笑わせてくれる。

これはまずいと、秘書谷村が、有美に進言をすることになる。最初は、慇懃無礼に、みんなが思っていることを伝えるが次第に本音が暴走してしまう。食事の食べ方からスマホカバーの色まで。もちろん有美は怒る。捨て身の進言により、有美は変わるのか、変わらないのか。

有美の父、前議員の川島昌平の病状が悪化した時、映画のリズムが変わる。地方議員など、今まで支えてくれて来たはずの周囲の人々が牙をむく。いわゆる”清須会議”だ。有美の立候補に至る真相があからさまになり、同時に日本の選挙を取り巻く状況が示される。旧態依然とした政界は、戦国時代から何も変わっていないのかもしれない。

有美と秘書の二人三脚の前代未聞の挑戦が、始まる。

古いもの、古いやり方、決まりきった物事が、国をがんじがらめにしている。打開するには、戦国大名並みの、度胸と強い意志が必要だ。前半のコメディ路線から一転、不可能への挑戦となる後半への流れは見事。一見出口なしの難しいものに挑む二人の姿に爽やかさが残る。わからないから、今のままでいいからという政治への無関心があったとしても、こんな風に笑いと痛快さで見せてくれる政治エンタメは楽しめる貴重な機会になるはずだ。坂下雄一郎監督の手腕が光る。

(オライカート昌子)

決戦は日曜日
(C)2021「決戦は日曜日」製作委員会
2022年製作/105分/G/日本
配給:クロックワークス