映画『消滅世界』解説・あらすじ
映画『消滅世界』とは
激動する「恋愛」「結婚」「家族」のあり方に翻弄される若者たちを描いた、芥川賞受賞作家・村田沙耶香による同名ベストセラー小説を実写映画化。芥川賞作家・村田沙耶香氏のベストセラー小説「消滅世界」が著者初の実写映画化。
今春英語版が刊行され、アメリカのニューヨーカー誌でも映画化が報じられるなど、世界的注目を浴びる原作を、気鋭の映像である川村誠が初監督・初脚本を手掛けた。
映画『消滅世界』キャスト
「朝が来る」の蒔田彩珠が雨音役で主演を務め、雨音の夫・朔役で栁俊太郎、雨音の親友・樹里役で恒松祐里、雨音の高校の同級生・水内役で結木滉星、樹里の夫・水人役で富田健太郎、雨音の元夫・正信役で清水尚弥が共演。
映画『消滅世界』あらすじ
人工授精で子どもを産むのが普通になった時代。家の中での夫婦間の性愛行為はタブー視され、恋の対象は、家庭外の恋人か2次元キャラであるべき時代。そんな世界で、両親が愛し合った末に生まれた雨音は、母親に嫌悪感を抱いていた。自身の結婚生活では家庭に性愛を持ち込まず、夫以外の人やキャラクターを相手に恋愛をする雨音だったが、彼女に変化が訪れた。
『消滅世界』映画レビュー
「アダムとイブの逆ってどう思う?」と言うセリフで始まる『消滅世界』は、衝撃の物語だ。個人的かつ日常的に描かれた未来世界でもある。最初は、現実と、それほど違いは見られない。それが現実とのズレがだんだんと大きくなっていき、行きつく先は、価値観の書き換えだ。
結婚、性、恋人、子どもを持つこと、家族。そういう当たり前の世界が消滅していく。雨音は、家庭内での性行為がタブー視された世界で、母と父が愛し合って生まれてきた。今や普通のことである人工授精で生まれてきたわけではなかった。その理由でいじめにもあった。普通でありたい気持ちが強かった。
性愛は、家庭の外に恋人を持つ家庭外恋愛か、二次元キャラが推奨される。雨音は、アニメのキャラに恋をしたことで、「私は普通だ」と喜ぶ。
『消滅世界』は、衝撃の世界を描いている以上に、雨音の個性を描いている。普通と違う生まれ方をして、普通の人間になろうとする。かすかな葛藤は、普通を通り過ぎていき、遂にはエデンという実験都市にたどり着く。
雨音の中にある野生は、周囲の不自然と相容れないのかもしれない。映画の中ではタブー視されているけれど、男女の家庭内での愛の行為は野性と自然として不可欠なものなのではないだろうか。というのも、雨音の周囲の人々はあまりひ弱に見えるからだ。
人は管理されればされるほど、魅力と活力が減退する。強めのテーマだけれど、語り口はスムースで心地良い。まるで『消滅世界』で描かれた世界にそのまま誘導されているような気分になる。
消滅世界
2025年製作/115分/日本
配給:ナカチカピクチャーズ
2025年11月28日ロードショー
(C)2025「消滅世界」製作委員会





