『SEBASTIANセバスチャン』解説・映画レビュー スリルと緊張、危うさと恍惚

映画『SEBASTIANセバスチャン』とは


ロンドンを舞台に、小説を書くことと、セックスワークの間で揺れ動く青年の姿が描かれる。『SEBASTIANセバスチャン』の監督は、ミッコ・マケラ。フィンランド出身の新人監督で、アメリカ最大のインディーズ映画サイト“インディワイア”が、注目のLGBTQ 映画監督ベスト25 に選んだ逸材。ヌーベルバーグ以降のフランス映画に強く影響を受けたという。

主人公マックスを演じるのは、スコットランドとイタリアにルーツを持つ新鋭俳優ルーアリ・モリカ(26歳)。本作が2024年サンダンス映画祭で上映されると、作品の評価とともにモリカの存在は一躍注目を集めた。その後、マーベルのテレビシリーズ『ビジョンクエスト』の主要キャストに抜擢された。共演は「タイタニック」のジョナサン・ハイド、「馬々と人間たち」のイングバル・シーグルズソン。

『SEBASTIANセバスチャン』映画レビュー スリルと緊張、危うさと恍惚


カメラは、セバスチャン/マックス(ルーアリ・モリカ)を追い続ける。どの角度から見てもどの部分を見ても美しい青年だ。田舎から出てきて、小説を書きながら出版社で契約社員として働いている。彼は秘密の職業を持っている。ウェブサイト「ドリーミィボーイ」に登録し、セックスワーカーとしての顔を持つ。それ以外の生活はシンプルだ。

映画には、スリルと緊張、危うさと恍惚がある。性愛パートも多い。彼はなぜ、セックスワーカーとして働くのか。小説を書くための経験だと自分には納得させている。だが、引いた一線を超える瞬間もある。一線は、高い山の間にかかる木橋のように頼りなくてゆらゆら揺れ続ける。マックス自身が揺れるように。

『セバスチャン』の監督ミッコ・マケラ出身は、やむを得ず選ぶ職業としてのセックスワーカーとしてではなく、自ら職業として選んでいる若者を描きたかったと語っている。セバスチャンは、まさしくそうだ。

カメラがセバスチャンを追い続ける理由は、彼のあやふやであいまいでリスクと恍惚を行き来する心理の揺れを描いているのだろう。やがて足場は崩れ、彼は自分をそっくりそのまま見つめることとなる。

考えてみれば、映画を作ることも小説を書くことも、人には普段見せない自分の中に隠れている部分をさらけ出すこと。それはセックスワーカーと変わりはない。セックスワーカーの方は、より肉体的で、創作活動はより精神的な部分を担っているだけ。恥ずかしがっている場合ではない。

最後まで見ると、マックスを尊敬せずにはいられない。なんという無謀と自分の未来への信頼だろうかと。私何をしているのだろうかと、自らを顧みずにいられない。

(オライカート昌子)

SEBASTIANセバスチャン
2026年1月9日(金)より公開
配給:リアリーライクフィルムズ
監督:ミッコ・マケラ Mikko Mäkelä
脚本:ミッコ・マケラ Mikko Mäkelä
製作:ジェームズ・ワトソン James Watson
撮影:イッカ・サルミネン Iikka Salminen
編集:アルットゥ・サルミ Arttu Salmi
音楽:イラリ・ヘイニラ Ilari Heinilä
Cast
マックスMax : ルーアリッヒ・モリカ Ruaridh Mollica
アムナAmna: ヒフトゥ・クアセムHiftu Quasem  
ダニエルDaniel : イングヴァル・シグルズソンIngvar Sigurdsson  
ニコラスNicholas: ジョナサン・ハイドJonathan Hyde  
クラウディアClaudia: ララ・ロッシLara Rossi  
ディオンヌDionne: リアン・ベストLeanne Best  
ピーターPeter: デヴィッド・ネリストDavid Nellist  
オリヴァーOliver: ペドロ・ミナスPedro Minas 
ジョーンJoan: フルール・キースFleur Keith 
ジョエルJoel: ディラン・ブレイディDylan Brady 
サミールSamir: アクバル・クルサAkbar Kurtha 
スチュアートStuart: マーカス・マクラウドMarcus Macleod  
アンAnne: ステラ・ゴネットStella Gonet 
ホテル受付係Hotel receptionist: ヴァレリア・ロコValeria Roco 
[ Sebastian | 2024年 | イギリス映画 | 英語・フランス語 | 110分 | 1.85:1 | 5.1ch | DCP & Blu-ray ]
日本語字幕翻訳 : 南裕子
© Sebastian Film and The British Film Institute 2024 / ReallyLikeFilm