『悪魔の追跡』リバイバル公開!

1970年代といえば、日本テレビ系列で生放送されていた

深夜お色気番組「11PM」に皆が釘付けだった(よね)。

低俗番組、ポルノ番組などと非難され、PTAやら婦人団体からの

批判や抗議が多く、子供に見せたくない番組ランキング上位の

常連に名を連ねた番組だ。

そんな「11PM」の中でも圧倒的人気を誇ったのが新作洋画コーナーだった。


今は亡き、品田雄吉と今野雄二両氏の「ヒゲのゆうちゃんコンビ」が

紹介する洋画紹介コーナーだが、当時その見せ方が話題を呼んだ。

なんと、ノーカットで見どころワンシーン丸々を流すのである。

『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)では、津波を受けて

転覆する豪華客船内の阿鼻叫喚をそのまま長々と映し出した。

『パララックス・ビュー』(1974年)では、

突然主人公を襲う巨大ダムの放水をノーカット放送して度肝を抜いた。


公開前の見せ場やクライマックスをそのまま見せちゃってイイの?

でも子供ながらに、めちゃくちゃ得した気分だった。

この「低俗番組」のおかげで映画を見たような気分になれたし、

なおさらに映画を見たい衝動に駆られたものだ。

もちろん、話題作『悪魔の追跡』(1975年)もこの枠で紹介された。

ずばり! タイトル通りの見せ場、

2分以上にもわたる壮絶なカーチェイスを惜しげも無く丸々と!

名優ウォーレン・オーツが「悪魔の追跡車」を

巧みなハンドルさばきで橋からハジキ落とす。


人気俳優ピーター・フォンダが

「悪魔の追跡車」のフロントめがけてライフルを構える。

いや〜、興奮したなぁ〜。

その公開後まもなくカルト映画と呼ばれるまでに昇華した『悪魔の追跡』が

4Kデジタル・リマスター版としてスクリーンに帰ってくる。

共同でバイク工場を経営するロジャー(ピーター・フォンダ)と

フランク(ウォーレン・オーツ)は、

休暇を取って各々の妻ケリーとアリスを伴い、

新しく購入したキャンピングカーに乗ってコロラドへ向かう。

しかし途中、テキサスの人里離れた荒野で1泊した夜、

ロジャーとフランクは悪魔崇拝者集団が少女を殺害する儀式を目撃、

それを集団に気づかれてしまった。


地元の警察に駆け込んでも相手にされず、

行く先々で集団の嫌がらせを受けたロジャーたちは、

銃を購入して応戦することを決断し、

執拗な追跡を退けながら逃げることとなる。

なんてったって、『ワイルドバンチ』(1969年)、『断絶』(1971年)、

『ガルシアの首』(1974年)のウォーレン・オーツが燻し銀を放つのだ。

『イージー★ライダー』(1969年)に続いて、またもや南部の奴らに

追い掛け回されるピーター・フォンダが哀れで悩ましい。

この映画の監督が、その後『ランボー』(1982年)で

シルベスター・スタローン演じるランボーを追い詰めるも

ヘリから転落死する保安官ガルトを演じた俳優ジャック・スターレット

だったことは、今回のリバイバルで初めて知った。

そんなジャック・スターレットもオーツもフォンダも

もうこの世にはいないが、銀幕では今なお輝いている。

1970年代を思い切り楽しめ。

そして伝説となった衝撃のラストシーンを目撃してほしい。

(武茂孝志)

『悪魔の追跡』

9月1日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、

全国順次ロードショー

1975年/アメリカ映画/カラー/89分/4Kデジタル・リマスター版

原題:RACE WITH THE DEVIL

宣伝:ブライトホース・フィルム 岩井秀世

配給:コピアポア・フィルム

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