『愛はステロイド』映画レビュー 過剰な愛が溢れ出す。

A24スタジオは才能を探しだすのがうまい。『X エックス』シリーズのタイ・ウエスト監督や、『ボーはおそれている』『ミッドサマー』『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスター監督は、彼らにしか作ることができない独特な作風で一気に注目の監督になった。

『愛はステロイド』は、イギリスの女性監督ローズ・グラス作品。前作の『セイント・モード/狂信』で長編映画デビューを果たし、第 74 回英国アカデミー賞で 2 つの賞にノミネートされ、2020年には英国インディペンデント映画賞の最優秀デビュー監督賞に選ばれている。今作の『愛はステロイド』も絶賛され、映画賞へのノミネートは44にものぼる。ローズ・グラス監督が今後注目の監督になるのは間違いないことだ。

『愛はステロイド』は、スタイリッシュな刺激と澄み切った余韻を残す。とんでもないレベルの飛躍がある。映画の枠をスーッと飛び越えるその意欲と豊穣な息吹、かすかに漂うアートな香りもたまらない。

1989年のアメリカ、ニューメキシコ州の田舎町。周囲は荒涼とした砂漠。ルー(クリスティン・スチュワート)はトレーニングジムで働いている。彼女が出会ったのは、たくましい筋肉を持った女性、ジャッキーだ。周囲の人々も巻き込んだ驚きの愛の交響曲が作品の主筋。バイオレンス、ノワールテイストとスリルや犯罪の香りも強烈だ。

『愛はステロイド』の愛の形は、危険でもあり、逃げられないところまで追い込む凄まじさで観客を包み込む。原題は「Love Lies Bleeding」。2つの意味がある。愛は血を流して横たわる。あるいは、愛は血を流して嘘をつく。その詩的なイメージと裏腹に、映画の実感は、乾いていて、軽みがあるところもポイント。

ところで主演のクリスティン・スチュワートは、なぜかわからないけれど気になる女優だ。あまり目にすることがないと、今何をしているのだろう、次の作品はどのようなものになるのだろうと興味が尽きないのだ。それは、彼女が今まで演じてきた様々な役柄が、意外性があって、印象深いだからかもしれない。美しいイメージの中にある強さ、現実味のある重さが同時にある俳優はなかなかいない。

(オライカート昌子)

愛はステロイド
8月29日(金)全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED監督&脚本:ローズ・グラス(『セイント・モード/狂信』)
共同脚本:ヴェロニカ・トフィウスカキャスト
出演:クリステン・スチュワート(『スペンサーダイアナの決意』)、ケイティ・オブライアン(『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』)、エド・ハリス(『トップガンマーヴェリック』)、ジェナ・マローン(『メッセンジャー』)
2024年|イギリス・アメリカ|カラー|2.39:1|5.1ch|104分|英語|原題:Love Lies Bleeding|R-15
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED