『侍タイムスリッパー』主演 山口馬木也さんインタビューその1 ”侍”が生まれる瞬間

たった一館から全国拡大公開された『侍タイムスリッパー』。主演の山口馬木也さんインタビューを行いました。今回はその一回目、映画に参加当時のこと、役作りなどを詳細に伺いました。インタビューを担当したのは、モデルでインフルエンサーのオライカート彩さんです。

山口馬木也さんインタビュー その2
山口馬木也さんインタビュー その3
山口馬木也さんインタビュー その4
山口馬木也さんインタビュー その5

侍タイムスリッパー』主演 山口馬木也さんインタビュー

監督が、「いた」と言った


━━『侍タイムスリッパー』に出演が決まった時は、どう思われましたか?
山口馬木也さん:これを作りたい、参加したい、面白いから作りたいという思いがありました。それしかなかったな。

━━以前に自主制作の映画に参加されたことはあるのでしょうか?
山口馬木也さん:はい、だけど短編ですね。長編は『侍タイムスリッパー』が、初めてでした。

━━自主映画ということで、普通の映画づくりとの違いはありましたか?
山口馬木也さん:圧倒的な違いは、人数が少ない、お金が少ないところですね。安田無双と呼ばれていますが、監督が監督・照明・撮影などをやっていて。本来、各パートに分かれてやることなんです。インディーズ映画ならではのところがありました。

━━役柄がお決まりになってからの準備が、特別にあったら教えてください。
山口馬木也さん:まず、僕が演じた高坂新左衛門は、会津弁をしゃべる人だったから、脚本を読んだときに、この人が、こんなしゃべり方をしたら素敵だな、と思うことがありました。映画を観たりして会津弁を研究した上でのことですが。
それで、監督と話をしていて、「この人だったらこんな風にしゃべりたいなというのがあるんです」と、お伝えして、「では、一回しゃべってみてください」、と言われて。こんなしゃべり方ですとしゃべってみたら、監督が、「あ、いた」と言ってくださったんです。

4年間コロナで滞っていて、ずっと監督の中にイメージがあったそうです。この人物に会ってみたい思っていたんですって。それで僕がそのしゃべり方をしたときに、「いた」って。監督がその場で目をウルウルさせて、それに僕も感動して、じゃあ今回はこのままいきましょうということになりました。

僕は時代劇を結構やっているんで、今更剣術の稽古もしませんでしたし、着物も着慣れていた。セリフを覚えることはやりましたが、あたかも今まで準備されていたかのように普通にすんなり入っていきました。

高坂新左衛門は僕自身。脚本を読んだだけで泣けてきた


━━今までのご経験が生かされて、なるべくしてなっているような
山口馬木也さん:脚本を読んだ段階で、その人だって思えちゃったのかな。なんかわからないですけど、まんまやるという感じでした。

━━山口さんと役柄の高坂さんではこういう点が似ているなとか、ありましたか?
山口馬木也さん:多分、全部僕。例えば、脚本を読んだときに、ここで泣くとか書いてないじゃないですか。書いてあるときもありますが。
おにぎりを食べるシーンとか、ショートケーキを食べるシーンなど、皆さん結構「おもしろかった、泣けてきた」とかおっしゃるんですが、あれは僕も泣いたのですが、台本には泣いてくれとは書いてないし、読んだ時点で僕が泣けてきました。自然に。だから多分、全部が僕なんです。

━━演じるというよりはそのままという感じでしょうか。
山口馬木也さん:今回のこの役に関しては、そういうことが凄く多かった気がします。

安田監督の純粋さが映画に出ている

━━監督からの演技プランのご提案はありましたか?
山口馬木也さん:もちろんありました。監督は違和感に気づくレーダーがあって、その感性たるや凄いなと思いました。そこと向き合うためには、こっちも本当に真摯に嘘つかないようにちゃんとやるしかなくて。
そこの画の説得力というのは、監督の才能しかなくて。例えば、ここに座るか、そこに座るかでその人の役の印象が変わったり、この役の心象が現われるというのは、監督の思惑でやっていることなのです。そこに僕がいたというだけのことだから、後で画を見たときに、凄いな、この人凄いんだな、と思いました。

━━安田監督とは初めてのお仕事だとお聞きしていますが、監督の印象は?
山口馬木也さん:無邪気な子どものような人で。作りたいもの、欲しいものがあったら、そこにどうやっても飛びついていく。子どもって山の中で棒を見つけたりしたら、それで夕方までずっと遊んでいるでしょ。
大人になったら考えられないぐらいの、好奇心や純粋なものを持ち続けていて、それがモノづくりに生かされている。だから僕はいい意味で子どものような監督だなと思いました。
夜中の三時ぐらいまで撮影した後に、今日撮ったものを送ってくるんですよ。「試しにつなげてみました」と、いうように。次の日、8時とかに撮影なんですよ。「あ、この人って、好きで楽しくてしょうがないんだろうな」って。じゃないとそんなことはしないわけで。仕事ではできないじゃないですか。単純に興味や好奇心でやっているだけであって、それ以上でも以下でもない。子どものような純粋さというものが、映画の中にも僕は凄く出ているなと思っています。

━━確かにそんな感じがします。面白さコミカルな部分とか
山口馬木也さん:そういった点「安田監督の作品」という感じがします。だから映画を見てもらえば、監督らしさが伝わるという感じです。

━━山口さんがこの作品の中で気に入っている部分とかはありますか?
山口馬木也さん:気に入っている部分は結構いっぱいあるんですよ。全部お気に入りでして。全てのシーンに意思を感じるシーンが多くて、だから全部が好きなんです。観見ている人は、おにぎり、ショートケーキ、クライマックスという声が多いんで、そういうところはたぶん一緒なんでしょうね。だけど、僕は全部かな。

(取材/撮影 オライカート彩(インスタグラム))

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侍タイムスリッパー
絶賛公開中
©2024 未来映画社
配給:ギャガ 未来映画社