『侍タイムスリッパー』安田淳一監督インタビュー その5 クライマックスの撮影秘話

『侍タイムスリッパー』の安田淳一監督インタビューの5回目(最終回)は、クライマックスの撮影秘話です。

心配無用ノ介の30分のミニドラマはあり?


━━シリーズ化される可能性もゼロではないですね、テレビドラマ化とか

安田淳一監督:映画としては一番面白い部分は描いてしまっているので、キャラクターは愛され続けるかもしれませんが、作品としては、続編は凡庸とは言わないまでも、本作よりインパクトのある作品を作り続けるのは難しいでしょうね。

『拳銃と目玉焼』の続編はまだですか、などと、よく聞かれるのですが、あれも手品の種を明かしているので、『マトリックス』の続編のようにしかならない。

テレビドラマとしてじっくり描くのはありだと思いますが、続編はね。スピンアウトとかはありだと思いますね。心配無用ノ介の30分のミニドラマとかはありですが。

イケイケの監督だったらやりかねないこと


━━ところで、一つお聞きしたいのは、もし監督があの映画の監督で、突然出演者が、真剣を使いたいと、言ったらどうしますか?

安田淳一監督:絶対やりません

━━やるわけない。

それからこれね、現代と言っても、2007年の話なんです。

━━それで携帯が。

安田淳一監督:携帯もそうですが、撮影所で最初に言われたのが、「現代の設定では、無理がある」ということです。なぜなら時代劇は地上波ではもうなくなってしまったから真実味がないと。黄昏ではなくて、深夜だから。

でも、この映画は時代劇の黄昏を描いていて、そうだとすると週に一本ぐらい撮影があった15年くらい前の話になります。そのころは、今のようにコンプライアンスもうるさくなかったし、気合で、あのくらいのことはあったかもしれません。イケイケの監督ならやりかねんわ、というところで。実際には有名な事故以降、撮影所に真剣は持ち込み禁止になっていますが、映画の話なので。

怖いほどリアルなクライマックスの撮影はバンジージャンプ的に


━━クライマックスは、怖いぐらいリアルだったのですが。

安田淳一監督:そのリアルさを出すことは、この作品の裏テーマでもあって、そのためにスタッフ、俳優も殺陣師もみんな考えたんです。もっとリアルにできないかということを、アイデアを出し合いました。脚本上のお膳立てはできていたのですが、実際のところ撮影時にどうすればいいのかわからなかった。

ああやってみよう、こうやってみようというように暗中模索のようでした。前半の立ち回りの撮影が終わってその夜のうちに編集。気がついたのは、間をいれるということ。それで緊張感がでるということが、わかりました。バンジージャンプのようにね、なかなか怖くて飛べないけれど、飛べば落ちるしかない。躊躇とかの間を入れると、緊張感がでるという発見です。

それで、こんな感じになりましたと、夜のうちに映像送ったのですが、翌日行ったら、みんなの周りに深刻な雰囲気が漂っていたんです。「なんかありましたか?」と聞くと、「俺たちは、一所懸命やっています。でも、これ以上はできないと思っています。監督に納得してもらおうと、頑張っているけれど、どうやったらそれができるのか、僕たちにはわからない。どうしたらいいんですか?」と言われたんですよ。

僕は「こんなんできました☆」と、気に入っているという意味で、☆マークまでつけて送ったんですが、相手が気に入るかわからないから「いいでしょう」とは、書かなかったんです。僕が気に入っていないと誤解されて深刻な感じになっていたようです。結局誤解が解けて皆あの前半の立ち回りが気に入ってるとなって撮影は続行。予定を超えて3日かかりましたが良いシーンになりました。大変でしたね、

━━伝説のシーンですね。今後の時代劇のスタンダードになる可能性もあるシーンだと思います。それでは、最後のメッセージをお願いします。

安田淳一監督:この映画は客席で笑い声や拍手がおこる様子が、僕らが子供のころの昭和の映画館のような雰囲気みたいで、客席ごとタイプスリップできるような作品になっていると思います。ぜひとも劇場で体験していただきたいです。よろしくお願いします。

安田淳一監督ありがとうございました。安田監督は、時に時代劇に使われるような単語を入れて、本物のサムライ的な雰囲気を感じさせるところもありました。今後の『侍タイムスリッパー』の快進撃にさらに期待したいところです。

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(取材/文 オライカート昌子

侍タイムスリッパー
絶賛公開中
©2024 未来映画社
配給:ギャガ 未来映画社