ハドソン川の奇跡

ハドソン川の奇跡
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クリント・イーストウッド監督が、実話を映画化した『ハドソン川の奇跡』が現在公開中です。そのプロモーションのために、主演のサリー機長を演じるトム・ハンクスとジェフ副操縦士を演じるアーロン・エッカートが来日しました。来日会見の模様をレポートします。

ハドソン川の奇跡とは
2009年1月15日、ニューヨーク、ラガーディア空港を飛び立ったUSエアウェイズ1549便に鳥の群れが衝突、両エンジンが停止したため、やむなくハドソン川に着水することになった。その決断と結果を描く実話の映画化が『ハドソン川の奇跡』だ。この事故にまつわる知られざる部分が映画のみどころでもある。監督は前作『アメリカン・スナイパー』で自身最高の興行成績を上げたクリント・イーストウッド。

クリント・イーストウッド監督は目をキラキラさせて微笑みながら映画を撮る

dscn4138トム・ハンクスさんとアーロン・エッカートさんが登場し、それぞれ最初の挨拶をすると会場は熱気に包まれました。サプライズで、クリント・イーストウッド監督の「ハロー、ジャパン、今日は東京へいけなくて残念だ。でもトムとアーロンがあなたたちと一緒にいると思う。映画を楽しんで欲しい」というメッセージが流れると、その簡潔さにあっけに取られて、会場は笑いの渦に包まれました。

アーロンエッカートさんは、「映画を撮っている間もこんな風でしたよ。彼と仕事をする楽しさを思い出しました。彼はいつも笑っていて、目もキラキラさせています。映画を作る作業も苦もなくできるような環境でした」と語りました。

トム・ハンクスさんは、「彼の仕事ぶりがわかると思います。言葉は少ないのですが、適切な言葉を選んで大切なことを言います。彼は偉大な俳優であり、偉大な監督です。彼が関わった映画は、いつ見たのかをよく覚えています。監督になってからの作品は目を見張るものが多く、もし今世紀を代表する偉大な作品を選ぶとしたら、彼の作品の5本か6本は必ず入っているでしょう。

彼が監督をするときはこういう風にこちらを見ます。(クリント・イーストウッドのまねをして)あの顔ですから、こちらも脅威に感じます。でもこれは、彼の機嫌がいいときなんですよ。

それから私たちに期待を持ってくれるということがあります。俳優が好きなんです。彼は俳優が演技するのを見るのも好きですし、自分が作りたい映画を作るためには、僕ら俳優たちに頼らなくてはならないことも知っているので、キャストを大切にしてくれるのです」とイーストウッド監督との仕事について語りました。

アーロンは、イーストウッド監督について、「映画のことを考えるとまず頭に浮かぶヒーロー的な存在です。撮影の初日のことをよくおぼえているのですが、ハドソン川のところで何百人もの人が集まって撮影をしていました。雨が降っている中、彼はウィンドブレーカーを着て、帽子をかぶり、ずっと私たちと一緒にいました。一瞬たりとも中に入ることはありませんでした。わたしたちと共にいて、指示を出したりしていました。そういうところは、私たち俳優にとってとっても力になります」と答えていました。

神話の裏の隠された事実に興味がある

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この何便に日本人が乗っていたのをご存知でしたか?と聞かれ、トムは、「いえ、初めて聞いて、裏で初めて会いました。荷物は無事だったのか聞きました」と答え、アーロンは、「凄い衝撃の後。スムースなランディングだったと話してくれました」と答えてくれました。

乗客のみなさんんどのように映画を見て欲しいかという質問に、トムは、「彼らは実際に体験しているので、何を言われても受け入れますが、装飾過多にしたり、ドラマチックにしすぎたりするのではなく、事実を事実としてちゃんと伝えいるかを見て欲しいと思っている「と答え、アーロンは「凄く面白かった:と言って欲しい。また見ている観客全てが自分が経験したことだと思って欲しい。着水のこともそうですが、NTSBから調査を受けたことも全て」と答えていました。

トムさんは、実在の偉大な人物を演じることが多いですが、そういった役を演じることの困難さはありますか?、なぜそういう役を演じるのでしょうか? という質問に、トムは「自分でも理由はわかりません。『トイストーリー』のウッディも演じていますが、わざわざ彼のところに行って質問することもありませんでしたしね。どのように実勢に起きたイベントが解釈されているか、ということに非常に興味があります。神話として残っている部分があるのですが、その奥に私たちの知らない事実も隠されているわけです。二幕までは知っていたけれど、三幕、4幕もあったという、そういう面白さ、そういうことに興味をひかれます

そうしてディティールを描くことにも魅了されます。わたしたちの仕事で大事なことはあまり飾り付けをしないということなんです。俳優やフィルムメーカーは物語を自分で編集したり作り直したりはすべきではありません。実際に起きたことはあるわけで、我々はそれをスクリーンに正確に描かなくてはならない。人間の行動も事実もあるし、ノンフェクションなら詳細にこだわるということもあるでしょう。一番大事なことは真実か否かということなんです」と答えました。

一体感とヒロイズムのストーリー

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このハドソン川の事件を初めて知ったのはどういうときだったのでしょうか? という質問に、アーロンは「ヨーロッパで映画を撮っているときにテレビで見ました。その映像というのはみんなが飛行機の横で毛布に包まっている姿でした。最初に思ったことは「何か悪いことが起きたのだ。9.11のような」というものでした。ですが、実際は全くその反対で、ヒロイズムのストーリーであり、ニューヨークというひとつの都市がコミュニュティとして一体となったストーリーだったのです」

トムは「私はアメリカにいてテレビで救援活動が始まっているところを見ました。ニューヨークやニュージャージーで実際にこの飛行機が飛んでいるのを見た人は、低空飛行だったので、またテロだ、ビルにぶつかるんじゃないか、何千人もの被害者を出すんじゃないかと悪いことを考えたと思うんです。私は実際に目撃しなくてよかった、もし見ていたら大声で叫んでいたでしょう」と答えていました。

『アポロ13』や『キャストアウェィ』、『キャプテン・フィリップス』までトムさんの旅はトラブル続きですが、また旅に出ようと思ったきっかけは? との質問にトムは「私はいい題材はいつも求めていますし、俳優としては闘争心も強いんです。やはり一番大切なのは脚本だと思っています。今回は脚本を17分ぐらいで読んでしまいました。

というのも脚本にいろいろなサプライズがあったからです。誰も知らなかった、私も知らなかった事実がありました。知っていると思っていたニュースの中にいろいろ知らないことがこれだけあったんだということは、いい映画が出来ると思いました。それに共演がアーロン・エッカートだということもあります」

アーロンは、「みなさんはいろいろ質問があると思いますが、わたしもみなさんと同じく、トムや監督のファンです。この映画にかかわることによって、自分の目でトムや監督の仕事ぶりを目にすることができました。素晴らしい経験でした」と答えていました。

ロバート・ゼメキス監督のフライトはご覧になりましたか、率直な感想をという質問に トムは「ロバート・ゼメキス監督はとても親しいですし、脚本も読みました。監督は本人がパイロットなので、整備のこととなど詳しく知っています。とても素晴らしい作品だったと思います。

今回は実際に起きた事実を忠実に描いています。また実際にサリーさん自身ににこういう場合はパイロットは何をすべきかなどを詳しく聞いています。脚本に書いてあるディテールも全て実際に聞いています。公聴会のことも。他にもパイロットを題材にした映画はたくさんありますが、わたしはこの映画に集中したいのです。さもないとキャスト・アウェイでボールに話しかけているのと同じことになってしまいます」

お互いに関係性、友情について、トムは「実は、サリーとジェフは知り合いではなかったんです。このシャーロットへのフライトのための4日前の打ち合わせで初めて顔を合わせたんです。フライトアテンダントも同じです。会ったのは初めてだったのですが、すぐにいいパートナーだと認め合ったと思います。サリーさんに聞いたんですが、なぜあの日のフライトの離陸をジェフさんに任せたのかと。サリーさんは、ジェフさんは機長になるための訓練として、何回かに一度は離陸を担当する必要があったからと言っていました」と答えていました。

(文/取材 オライカート昌子)

ハドソン川の奇跡
2016年9月24日(土)丸の内ピカデリー 新宿ピカデリー他全国ロードショー
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/hudson-kiseki/