『ただ悪より救いたまえ』見逃せないポイントとは 作品解説と映画レビュー 韓国トップ俳優の激突に注目

『ただ悪より救いたまえ』の作品解説・あらすじ

『ただ悪より救いたまえ』とは

韓国を席捲した暴走ノワールアクションエンターテイメント。主演に、韓国映画を引っ張るスター、ファン・ジョンミン。共演に世界中でヒットしたNetflixの韓国ドラマ『イカゲーム』イ・ジョンジェ。二人が共演するのは、『新しき世界』以来。

監督/脚本は『チェイサー』、『哀しき獣』などの脚本家ホン・ウォンチャン。撮影監督に、アカデミー賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』のホン・ギョンピョ。

『ただ悪より救いたまえ』あらすじ

元韓国工作員のインナムは、切り捨てられた後、凄腕の暗殺者となった。引退前の最後の仕事は、日本のヤクザ、コレエダを殺害すること。ただ、この最後の仕事は、コレエダの義兄弟だった冷酷な殺し屋レイをおびき寄せてしまう。レイは、インナムの関係者は残さず手にかけ、追い詰め、さらにインナムを狙う

一方、インナムの元恋人、ソ・ヨンジュは娘を産みタイで暮らしていた。ある日、娘が誘拐される、さらに本人も遺体で発見される。娘の存在を知ったインナムは、娘を探し出すため、救うためタイへ向かう。レイもタイへとやって来る。インナムとレイの戦いは、タイの警察や犯罪組織を巻き込んでいく。

『ただ悪より救いたまえ』を楽しむポイント

その1 惚れ惚れする二人のスター

なんといっても、インナムを演じるファン・ジョンミンとレイを演じるイ・ジョンジェの暗殺者同士の追いつ追われつの戦いが見事。二人の重量級の存在感と美しい所作や対比に見どころがあります。

その2 流麗なカメラワークと、日本、韓国、タイのロケーション

『ただ悪より救いたまえ』の特徴の一つは、一味違うカメラワーク。最初のシーンは、日本での撮影ですが、古典的な映画を思わせる独特の空間が印象的。インナムが登場するのは、暗殺シーンですが、暗闇からスッと顔を出すシーンは、美しいながらゾッと背筋が寒くなる感覚があります。

タイのシーンでも、観光客や物売りなどが溢れている屋外のシーンと、静けさの漂う屋内シーンの落差が丁寧に描かれていて、空気や温度の違いまで伝わるこだわりを見せてくれます。

バトルシーンのこだわりは、いくつものカメラを用意し、ワンテイクで撮影しているところ、流麗なシーンとなっています。

その3 ファン・ジョンミン作品の中でも抜群の高評価

数々の賞を獲得しているファン・ジョンミン作品は、良質なものが多いのですが、『ただ悪より救いたまえ』は世界中で抜群の高評価となっています。ロッテントマトでは、94%。韓国では、『新感染半島 ファイナル・ステージ』以上の大ヒットを記録。

『ただ悪より救いたまえ』映画レビュー

世界には素晴らしいスターがたくさんいる。世界の映画をけん引する力を見せてくれる韓国映画を彩るスターも多数いる。その中でも私の中では、ファン・ジョンミンは格別だ。人柄のいい役、悪が強い役、幸薄い役、どんな役でも、どこかしら人間性が滲み出る。その辺りに惹きつけられてしまう。

ファン・ジョンミンの作品には、ヒット作も多いし、評価の高い作品も数あるけれど、『ただ悪より救いたまえ』は、彼の出演歴の中の決定版としてずっと心に残ると思う。

彼が演じるのは、暗殺者インナム。元は韓国の工作員。だが国策によって切り捨てられ、命を狙われる立場になる。最後の仕事として日本での暗殺を請け負った彼は、パナマでの生活を夢見る。だが、かつての恋人がタイで殺され、その上彼の娘らしい子供も誘拐されたことを知る。子どもの行方を追う彼を、狂暴な殺し屋レイが狙ってくる。日本でインナムが手を下したコレエダの義弟だ。

レイを演じるのは、イ・ジョンジェ。ファン・ジョンミンとは、『新しき世界』で共演。『ただ悪より救いたまえ』でのイ・ジョンジェの怪演は、美しくも凄まじい。レイは言う。「相手はいつもこういう。ここまでやる必要が? と。懇願と命乞いをする。俺はそれが見たくてやっているんだ」

インナムの方は、辛さ、思い、くやしさ、やるせなさ、やり遂げる心意気が滲み出る。イ二人の暗殺者は、ともにナイフ使いだ。ただ使い方が違う。あり方も違う。二人の対比と演技合戦は、ため息をつかせてくれる。

二人の暗殺者が、日陰の部分を表現しているとしたら、『ただ悪より救いたまえ』の清涼剤として優しく包み込むような役割を果たしているのは、トランスジェンダーのユイだ。韓国に子供を残しながら、性転換手術のためにバンコクに滞在している。大金と引き換えに、インナムのバンコク滞在の手助けをすることになる。ユイを演じるパク・ジョンミンの演技は目が離せない充実感を与えてくれる。

(オライカート昌子)

ただ悪より救いたまえ
12月24日(金)よりシネマート新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー
配給:ツイン
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監督/脚本:ホン・ウォンチャン 『チェイサー』『哀しき獣』(脚本)
出演:ファン・ジョンミン『ベテラン』、イ・ジョンジェ『新しき世界』、パク・ジョンミン『それだけが、僕の世界』

2020年/韓国/韓国語ほか/シネスコ/カラー/108分 PG-12
公式サイト:tadaaku.com