『カルキ 2898-AD』とは
『カルキ 2898-AD』は、『バーフバリ』二部作、『SAAHO/サーホー』(2019)、『SALAAR/サラール』(2023)などで絶大な人気を誇るブラバースを主演に迎えた超大作映画。インド神話と SFが融合した独特の世界観が特大スケールで描かれている。
ブラバースが演じているのは、戦闘では負けたことがない最強の賞金稼ぎバイラヴァ。『JAWAN/ジャワーン』でも美しい演技を見せてくれたディーピカー・パードゥコーンも重要な役で登場。さらに、インド映画史上最も偉大な俳優の 1 人として知られるアミターブ・バッチャンが主演級の活躍を見せる。監督は、ナーグ・アシュウィン 。
『カルキ 2898-AD』の見逃せないポイントとは
インド神話とSFが合体したスペクタクルな世界
『カルキ 2898-AD』のスタートは神話の世界。インドの神話二大叙事詩のうちの「マハーバーラタ」の世界が繰り広げられる。ちなみに二大叙事詩のもう一つは、ラーマーヤナ。ラーマーヤナがラーマという一人の主人公にスポットライトを当てているのに対し「マハーバーラタ」は、まさにカオスの世界。長大な時間と何人もの英雄が登場する。
だが、『カルキ 2898-AD』で描かれるマハーバーラタの世界は一瞬で終わる、ストーリーは一気に6000年後の世界の⻄暦 2898 へ移動。そこからの舞台は荒廃した地球だ。巨⼤要塞“コンプレックス”が地球で唯一残る地上都市カーシーを支配している状況。そこから始まるスペクタクルで絢爛な世界が見どころの一つ。
賞金稼ぎの男バイラヴァ演じるブラバースは見逃せない
宿命の男を演じさせたら、ブラーバースは最高の俳優だ。それほど、ブラバースは重い運命を背負った男が似合う。そのブラバースが演じるバイラヴァは、軽くてコメディタッチ。今までとはちょっと違う。登場を今か今かと待ち受けていた観客は肩透かしをくらうかもしれない。
戦闘では負けたことがない最強の賞⾦稼ぎ。相棒はゴミ置き場から拾ってきて自分で直したAI搭載のハイテクカー、ブッジ。人を信用しないのは彼の生い立ちのせいだろうか。彼が強い思いで願うのは、下層の生活から抜け出すこと。そんな彼が変身を遂げることができるのかどうか。観客はワクワクハラハラさせられながら待つことになる。
ブラバースと並ぶ主演級の二人の凄さに酔え
『カルキ 2898-AD』でブラバースと並ぶ立ち位置で映画を支える役柄が二人いる。一人はディーピカー・パードゥコーンが演じるスマティ。支配層のコンプレックスと反乱軍が激突する理由を持つ重要な役柄を、美しく成熟した演技で見せてくれる。
もう一人の要となる役柄を演じるのがアミターブ・バッチャン。不死身の戦士アシュヴァッターマンを演じている。現在82歳。撮影開始時点で 78 歳だったアミターブ・バッチャンが、途中胸郭を痛めるアクシデントに⾒舞われながらも、器具の⼒を借りてアクションシーンを実写で演じているところは驚きだ。しかもマハーバーラタと西暦2898をつなぐ役割もある。
この二人の存在感と輝きは相当力強い。さらに唯一無二の無敵の男ブラバースと組むわけなのだ、それだけでも見る価値は存分に感じられるのではないだろうか。
『カルキ 2898-AD』は、マハーバーラタの続編?
マハーバーラタは、聖書の4倍の量、10万詩節からなる長大な叙事詩。登場人物の数も多い。S.S.ラージャマウリ監督も、アーミル・カーンも映画化を構想していたというが、まだ実現していない。それを、マハーバーラタの一部の登場人物を取り上げ、未来世界とリンクさせたSFファンタジーにするという驚きの構想で実現したのが、ナーグ・アシュウィン監督だ。
さらに「カルキ伝説」を絡め、ストーリーは重層で豊かな世界を作り上げている。『カルキ伝説』は、「マハーバーラタ」より後に作られた聖典によっているという。それは、シャンバラで⽣まれたカルキが世界を救うというもの。マハーバーラタと、その後に作られたカルキ伝説を自由な形で合体させ、新たな物語を紡いでいる形は、まさにマハーバラーラタに続編が作られたようにも見える。
新鮮なSFビジュアルデザイン
『カルキ 2898 AD』は、今までハリウッドなどで作られてきたSFファンタジー映画をブラッシュアップし、オマージュしているシーンが見られる。地上世界を支配するコンプレックスは、『エリジウム』、『スター・ウォーズ』や『デューン/砂の惑星』的な世界デザイン。『マッドマックス』を思わせる砂漠とディストピア。
それだけでなく、インドの絢爛な伝統的スタイルが、ハリウッドスタイルを覆い隠す量で圧倒する、新鮮なビジュアルに注目。
知っておきたいマハーバーラタの基礎知識
「マハーバーラタ」はサンスクリット語の叙事詩で、紀元前4世紀〜紀元後4世紀ごろに成立した。バラタ族同士の王位継承が主軸。ヒンドゥー教の聖典という意味合いもあり、有名な聖典『バガヴァッドギーター』はこの第6巻目を抜粋したもの。
「マハーバーラタ」では神の血を引くものや神の化身が登場。美女や異能、超能力バトル、裏切りや騙し、嫉妬や欲望が渦巻く。インドの庶民の間でも人気の叙事詩だ。日本でも歌舞伎化や舞台化されたこともあり、徐々に注目を集めつつある。
「マハーバーラタ」では、五王子側のパーンダヴァ(パーンドゥ王の⼦)対、100人の王子側のカウラヴァ(クル族)が敵対していく。5王子と100王子は元をたどれば、親族同士。親族同士の中で起こる嫉妬と王位継承争いと、そこから大戦争が起こる。大戦争とは、クルクシェートラで⾏われた⼗⼋⽇間に及ぶ戦いでありで⽣き残ったのは、五王⼦とわずかな者たちのみだった。
マハーバーラタの有名な登場人物
五王子側 パーンダヴァ
アルジュナ(インドラ神の息子。神⼸ガーンディーヴァを操る⼸使いであり、クリシュナから直接教えを受けた。⼆⼈の対話が『バガヴァッド・ギーター)。
クリシュナ(ヴィシュヌ神の化⾝)
百王子側 クル族
ドゥルヨーダナ(百王子の長兄。戦争の原因だが彼を慕う人物は多い)
ドローナ(クル国の戦術指南役)
カルナ(マハーバーラタの中でも特に民衆に人気が高い。敵味方で戦っているが、実は五王子側の長子)
アシュヴァッターマン(ドゥルヨーダナに仕えるバラモンの戦士。⽣まれながら額に宝⽯があり、シヴァ神(バイラヴァ)の⼒を秘めている。父であるドローナが策略にかかり戦死したことの復讐のため、戦争で生き残った五王子側のバーンタヴァを夜襲。アルジュナの息⼦アビマニュの妻の腹にいた胎児を、神の武器で殺した。クリシュナは、胎児殺しの罪を背負ったアシュヴァッターマンから、額の宝⽯を奪って三千年間世界を彷徨い続ける呪いをかけた。ここが、『カルキ 2898-AD』の冒頭シーンとなる。
カルキ 2898 AD
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2024年製作/168分/G/インド
原題または英題:Kalki 2898 AD
配給:ツイン
劇場公開日:2025年1月3日