『ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション』の主演、麻薬取締官ジョンを演じているルーク・エヴァンスに目を留めたのは、『インモータルズ−神々の戦い−(2011)』のゼウス役だった。若き日のルーク・エヴァンスは、危険さと色気と素朴さを併せ持つ稀有な存在感があって、彼の作品は必ず見たいと思っていた。そんな彼が、『ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション』では、年齢を重ね、『ワイルドスピード』シリーズや『実写版 美女と野獣』のガストン役などの経験を経て、おじさんアクションの担い手として、新規に主演者として登場してきた。

対になるのは、ルイ・グンメイ演じるジョーイ。最近の『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』での演技が忘れがたい。『ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション』のジョーイ役は、『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』と設定が似ている。子どもがいるけれど、夫との子ではない。子どものせいで窮地に立たされる。
ただし、ジョーイには、強いアドバンテージがある。恐るべきドライビングテクニックと、周囲を振り回す意思の強さがまるで『マッドマックス:フュリオサ』のようだ。夫は麻薬密売の容疑がかかる億万長者のクワン(サン・カン)。
かつて台北でクアンを捕まえそこねたジョンが、クワンの帳簿データを持つという匿名メールを受け取り、休暇という名目で台北行く。『ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション』には銃撃戦、追いつ追われつのカーアクション、素手での激闘など、アクションも華々しく散りばめられている。
アクション以上にテーマ性を感じたのは、三角形の人間関係だ。ジョーイをめぐるクワンとジョン。劇中映画館で流れるチャン・イーモウ監督の『LOVERS(2004)』にも共通する。あくまでアクション映画ということで深く掘り下げているわけではないけれど。
少し残念だったのは、かつては怪しい魅力を放っていたルーク・エヴァンスが、アントニオ・バンデラスやブルース・ウィルスの二番煎じのように見えてしまったこと。むしろジョーイに執着するクアンを演じるサン・カンのほうが悲しい気高さを感じさせた。一番印象強いのは、美しい実力派ルイ・グンメイとその息子レイモンド(ワイアット・ヤン)だ。ドライブテクニックだけではない。嵐のような猛々しさがあった。
製作・脚本:リュック・ベッソン。「レオン」「フィフス・エレメント」などで監督を務め、「TAXi」「トランスポーター」「96時間」シリーズなどの傑作アクションを世に送り出してきたフランス映画界を代表するヒットメーカー。監督は「ザ・プロデューサー」のジョージ・ホアン。
ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション
10月24日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国公開
配給:アット エンタテインメント
© 2024 – EUROPACORP
製作・脚本:リュック・ベッソン、監督・脚本:ジョージ・ホアン『ザ・プロデューサー』、撮影監督:コリン・ワンダースマン『DOGMAN ドッグマン』、音楽:マッテオ・ロカシューリ、編集:ルーカス・ファビアーニ
出演:ルーク・エヴァンス『ワイルド・スピード』、グイ・ルンメイ『薄氷の殺人』、サン・カン『ワイルド・スピード』
2024 年/フランス=台湾=アメリカ/英語、中国語/100分/カラー/シネスコサイズ/原題:Weekend in Taipei/
映倫マーク:G 公式HP:drivecrazytm.com 公式
X@drivecrazytm


.jpg)


