『レッド・ツェッペリン:ビカミング』映画レビュー 気品ある若さと老いの二重奏

『レッド・ツェッペリン:ビカミング』は、もしあなたが今までレッド・ツェッペリンをあまり知らなかったとしても、ぜひ見て欲しい作品だ。むしろそういう人こそ(わたしもそうだ)彼らの輝きに衝撃を受けるだろう。

『レッド・ツェッペリン:ビカミング』は、史上最高のバンドのひとつ、レッド・ツェッペリンの唯一無二のメンバー公認ドキュメンタリー映画。謎に包まれた一枚目のアルバムから、スターになるまでのバンド誕生の経緯と秘密を描いた奇跡的な映画だ。演奏パートは、一曲最後まで見せてくれて、その場にいるような臨場感がある。興奮がスクリーンを満たす。

『レッド・ツェッペリン:ビカミング』に驚かされた点は、いくつもある。ひとつは、ジミー・ペイジ(ギター)、ジョン・ポール・ジョーンズ(ベース)、ロバート・プラント(ボーカル)、3人の紳士的な姿。伝説的な有名バンドのメンバーにはイメージがつきまとう。奔放な生活、クスリ、女。ところが、『レッド・ツェッペリン:ビカミング』でのレッド・ツェッペリンのメンバーは、若いときから年齢を重ねた今の時点まで、気品と気概を持って年齢を重ねている様子が漂っている。勤勉、好きなことにひたすら向き合うこと。自分の信じることに全力を尽くすなど。

次の驚きは、一枚目のアルバムが売れ、ビートルズの地位を追い抜く勢いで、爆発的な人気を得るまでの秘話だ。地道にギグ(コンサート)を重ね、アメリカ中を駆け回った。成功をつかむまでの道のりは手堅さと真っ当さがある。栄光はどんな困難があろうとも、自ら掴む。その姿が心を打つ。リードギターのジミー・ペイジがヤードバーズ時代に考えたシステマティックな考え方、それまで各自、自分の道を歩いていたメンバーが結びつき揃い、一緒に演奏するときの高揚感には伝説的な風が吹いている。

さらなる驚きは、語り、見せ、コンサートを丸ごと見せる手法。ドキュメンタリーとしての完成度と惹きつける力が強い。メンバー個人の語りと、映像と画像で見せる若き日の姿は、そのままイギリスの変化や音楽シーンの成長にも重なる。

メンバーは誰一人欠かせないものの、80年代に世を去ったドラム担当、ジョン・ボーナムがバンドの錨のような存在だったこともうかがえる。ジョン・ボーナムの卓越した技術がバンドを支えた。彼が世を去った後、レッド・ツェッペリンは解散した。ジョン・ボーナムが生前残したインタビューの声を耳にするときの各メンバーの笑顔がひと際チャーミングだった。

(オライカート昌子)

レッド・ツェッペリン:ビカミング
©2025 PARADISE PICTURES LTD.
9月26日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかIMAX®同時公開
配給:ポニーキャニオン
監督・脚本:バーナード・マクマホン(「アメリカン・エピック」) 共同脚本:アリソン・マクガーティ 撮影:バーン・モーエン 編集:ダン・ギトリン
ジミー・ペイジ ジョン・ポール・ジョーンズ ジョン・ボーナム ロバート・プラント
2025年/イギリス・アメリカ/英語/ビスタ/5.1ch/122分/日本語字幕:川田菜保子/字幕監修:山崎洋一郎/
原題:BECOMING LED ZEPPELIN/配給:ポニーキャニオン 提供:東北新社/ポニーキャニオン  ZEP-movie.com
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