『ファイナル・プラン』映画レビュー

温厚な男がキレるお父さんに変貌するプロセスを演じさせたら、ピカ一のリーアム・ニーソン。そんな彼が、冷静な爆破強盗を演じ、頭脳と技能を駆使し。冷静にキレる演技を見せてくれたのが、『ファイナル・プラン』だ。

全米犯罪史に名を残す、銀行強盗のトム・カーターは、痕跡も犠牲者も一切残さない凄腕だ。各地の銀行を襲い、莫大な金を奪ってきたが、その正体をFBIに知られることなく、ある日突然犯罪をストップした。彼に何が起こったのか。

それは一人の女性との出会いだった。アニーは、賢明で優しく、前向きで愉快だ。カーターは、生き方を変える決心をし、FBIに自首を試みる。今までの犯罪の償いをしなければ、まっさらな状態でアニーと結婚することはできないと思ったから。自首には条件をつけ、面会は自由にできること、刑期は短く。その代わり奪った金は残らず返却すると。

だが、FBIの若手が金の横領を決行したことから、事態は混乱し、カーターは決めたルートを回復すべく戦うことを余儀なくされる。

『ファイナル・プラン』は、カーターの知略と技術と胆力を最大限に発揮させる最後の仕掛けが見どころであるのは間違いない。そこに、それなりの痛快感はあるけれど、心に響くとしたら、愛のパートだ。

犯罪映画にも愛はつきものだ。大概は、異性との出会いによって人は悪に傾く。だが『ファイナル・プラン』は、愛によって善に向かっていく強い意思が、背景に動かしがたい山のようにそびえ立つ。

そこがこの映画のオリジナリティであり、同時に欠点とも言える。FBIの面々も、人を変え、犯罪をストップさせ、自首させる愛の力を疑いはしないけれど、あまり真面目に受け取らない。

愛とお金とを並べられたら、お金を選ぶという固い思い込みが強いのか。愛を選び落とし前をつけるこの映画はファンタジー風に過ぎないのか。そうではない、と言いたいがために、『ファイナル・プラン』のテーマは、別の登場人物にさらに強い愛の力を与える。その登場人物の言葉はこうだ。「心に従って行動すれば、解決する」

愛とお金は全く違う。並べられるものではないという主題に納得できるかどうかが、この映画を受け止め方を変える。

オライカート昌子

ファイナル・プラン

©2019 Honest Thief Productions, LLC
2021年7月16日より全国ロードショー
(アメリカ映画/カラー/5.1ch/上映時間:98 分)
出演:リーアム・ニーソン、 ケイト・ウォルシュ、 ジェフリー・ドノヴァン、ジェイ・コートニー、アンソニー・ラモス、ロバート・パトリック
監督・プロデューサー・脚本:マーク・ウィリアムズ
撮影監督:シェリー・ジョンソン
プロダクション・デザイン:トム・リゾウスキ
キャスティング・ディレクター:メアリー・ヴァーニュー、ミシェル・ウェイド・バード
衣装デザイン:デボラ・ニューホール 音楽:マーク・アイシャム
編集:マイケル・P・ショーヴァー
スタント・コーディネーター:マーク・ヴァンセロー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式 HP:https://happinet-phantom.com/finalplan/