『Bittersand』映画レビュー

『Bittersand』、ビターサンド。この映画のタイトルには、苦味を挟んだサンドイッチという意味があるらしい。高校時代のビターな記憶を忘れられない登場人物たちは、記憶を書き換えることができるだろうか。過去を乗り越えることができるだろうか? というのが映画『Bittersand』の主題である。

最初のシーンと、エンドロール後の短いシーンが、本編をサンドしている。本編は、過去と向き合い、書き換えるプロセスだ。高校時代の忌まわしい”黒板事件”の真相を巡り、ミステリー仕立てとなっている。

一人の登場人物もおろそかにしない心意気に好感が持てる。爽やかな印象が残るラストの後味は優しい感触だ。

25才の暁人は、サラリーマンとして代わり映えのしない日々を送っている。悪友の井葉と、井葉の彼女(?)の澄子と会食をした日、高校時代に思いを寄せていた絵莉子と道端で出くわす。彼女にとって、暁人は、高校時代のきつい思い出を蘇らせる存在だった。

暁人は、”黒板事件”が自分にも影響していることを自覚し、真相を究明し明るみにだす覚悟を決める。井葉は、嘘を本当にすべく活動を始める。二人の行動は何かを変えるのだろうか?

田舎と都会が一緒になったような舞台が郷愁を誘う。大切なシーンが繰り広げられるのは、時代劇に出てきそうな橋の上だ。ご当地映画をうたっていないので、どこでもあり得るし、どこにもない場所という特性が効果を生み出す。その効果とは、高校時代のフレッシュでいて、苦味もある思い出を観客に蘇らせるかもしれないところだ。

ミステリーの解決偏となるシーンは、まるで昔の探偵映画のようでもあり、収まり具合が丁度いい。監督は今回が長編第一作目となる杉岡知哉。今後が楽しみな監督だ。

オライカート昌子

Bittersand
全国順次公開中
監督:杉岡知哉
キャスト:井上祐貴、木下彩音、萩原利久、森田望智、柾木玲弥ほか
2021年製作/99分/G/日本
配給:ラビットハウス

(C)「Bittersand」製作委員会