『妖怪大戦争 ガーディアンズ』映画レビュー

『妖怪大戦争 ガーディアンズ』を見て、心が洗われ、感動し、涙するとは思わなかった。子供向けファンタジーだと侮るなかれ。子どもも楽しめる映画なのは間違いない。同時に子どもの心が息づいている大人にこそぴったりの映画なのだ。

人類を破滅から救う「選ばれしもの」となってしまったケイ(寺田心)の大冒険がダイナミックに描かれている。妖怪に親しんだ人なら忘れられないぬらりひょん、姑獲鳥、雪女、小豆洗いなどの様々な妖怪たちとともに。わくわく感が映画を強く引っ張ってくれる。

監督は2005年の『妖怪大戦争』でも監督/脚本をつとめた三池崇史。頼まれたら断らないということでも有名な三池監督は、作品ごとの評のバラつきも多いけれど、エンターテイメント性の高さは、誰しもが認めるところだ。

監督の心の深いところに隠されているだろう純粋性と共感度の高さ。それが作品に滲み出てくると、味わい深さは針を振り切る。娯楽性と美的感性。それが重なり、奇跡的に調合される。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にはそれがある。

メインストーリーでは、これでもかという勢いでクライマックスが大量に畳みかけてくる。桜舞い散る中での雅樂シーンや狸の大群では感動マックスだ。サイドストーリーの狐の物語や携帯電話のエピソードも忘れがたい。

今後、これほど大規模で、主演級をそろえた、映画的エッセンスを残した作品が出現するだろうか。今や、ほとんどの映画がお手軽CGで済ませてしまうところ、この映画に関しては、あまりCG色を感じない。メーキャップも被り物だ。そこがキャストの生身の力を引き出すことに力を貸している。

邦画のパワーが最大限発揮されたこの作品は、可能ならばぜひ劇場で見てほしい。元気がチャージされた気分になることは間違いない。

(オライカート昌子)

妖怪大戦争 ガーディアンズ
2021年製作/118分/G/日本
配給:東宝、KADOKAWA