『グロリア 永遠の青春』解説とあらすじ 映画レビュー 

グロリア 永遠の青春 解説とあらすじ

グロリア 永遠の青春とは

2014年に公開され、世界中で評価されたチリ映画『グロリアの青春』をジュリアン・ムーア主演でリメイク。手がけたのは、オリジナル版のチリ人監督本人である、セバスティアン・レリオ。

舞台はアメリカ、ロサンゼルス。登場人物やストーリー設定は少し違うものの、セリフや画面構成はオリジナルを生かしている。

子育てを終え、離婚を経験し、仕事を持ち自立したアラフィフ女性、グロリア。彼女の迷いや恋、老いへの実感、孤独などがリアルな肌触りで伝わってくる作品だ。

リメイクを切望し、自ら製作総指揮も兼任ししているアカデミー賞女優のジュリアン・ムーアが、今まであまり演じたことのない、等身大の女性を熱演。

グロリアに出会う男性役に、『トランスフォーマー』シリーズのベテラン俳優、ジョン・タトゥーロ、グロリアの娘役に『アオラレ』でラッセル・クロウ演じる暴力男に必死に立ち向かった姿が印象的だったカレン・ピストリアス。グロリアの息子には、2000年代に『スーパーバッド 童貞ウォーズ』、『JUNO ジュノ』などの活躍が著しかったマイケル・セラ。

グロリア 永遠の青春 あらすじ


子育ても一段落し、離婚も経験したグロリア。仕事をし、自由を楽しんでいたが、大好きなダンスを踊るために行ったホールで、同じように離婚した男性アーノルドと出会った。アミューズメント施設を経営する彼は、理想的な恋人になりそうだったが、懸念はひとつ、彼の元家族との関係は複雑らしく、グロリアのことを紹介する気配もない。

そんな中、近くに住み何かと助け合っていた娘が、妊娠し、ボーイフレンドと一緒に暮らすため国を離れることに。老いを感じることもあり、グロリアの日々も変化していく。アーノルドとの仲も不安定だった。グロリアはどのような決断を送るのか。

グロリア 永遠の青春 映画レビュー


美しく実力もある女優だが、ジュリアン・ムーアは、好みの女優ではなかった。隙がなく、完璧過ぎる。弱さよりも芯の強さが勝つ。女らしさを売りにしない分、可愛げがない。それは長所でもあり個性なのだけど。

ところが、『グロリア 永遠の青春』では、今まで見えてこなかった彼女の素顔を感じさせてくれて、なぜか嬉しくなった。

中年過ぎの孤独な女性、グロリアは、それを認めたくなくて、いつまでも求められる素敵な女性でいたいと思っている。落ち込んだら、何とか気持ちを盛り上げようと、新しいことにもチャレンジしていく。完璧な人生を求めているのだ。

だが、そううまくはいかない。付き合い始めた男性は、自分より元の家族を優先する時がある。それが不満だ。(実はグロリア自身もそうなのだけど、それにグロリアは気づいていない)

折り合いをつけること。相手のありのままを受け入れること。そうありたいとは思うけど、簡単ではない。何かにぶつからないと、気づかないことが多すぎる。そんな日常生活をおかしみと、包み込むのようなまなざしで描いているのが、『グロリア 永遠の青春』だ。

彼女の真の姿は、後ろ姿を追うカメラでより鮮明に浮かび上がる。廊下を歩く姿、長いエスカレーターに乗る姿。美しさより、年相応の不格好さもある。ただ、彼女の今までの日々を刻み付けた年輪やそれなりの自信も浮かび上がる。

その姿を見て思い出したのは、80年代の映画の、『グロリア』だ。ジョン・カサヴェテス監督、ジーナ・ローランズ主演の伝説的なハードボイルド映画であり、中年女性のグロリアが組織から預けられた少年を守るため、対峙する作品だった。同じ名前だが、戦い方も違う、戦う対象も違う。それでもどこか共通点がある。ローラ・ブラニガンの曲、『グロリア』で踊るグロリアの姿は、心を熱くさせてくれる。

(オライカート昌子)

グロリア 永遠の青春
2018年製作/101分/PG12/アメリカ
原題:Gloria Bell
配給:キノシネマ