北村龍平監督のハリウッド挑戦第2作目は、今旬のイケメン俳優、ルーク・エヴァンスを起用したホラー・サスペンス作品となった。
ちなみに北村監督のハリウッド挑戦一作目は、『ミッドナイト・ミート・トレイン』で、ブラッドリー・クーパーが出演している。ブラッドリー・クーパーは、御存知の通り、今やセクシー男優ナンバーワン。
ルーク・エヴァンスも、ホビット第二作『ホビット スマウグの荒らし場』や、『ワイルド・スピード EURO MISSION』など超大作への出演で、更なる注目を浴びるのは確実。北村龍平監督は、この先大ブレイクを果たしそうな俳優を察知する能力があるらしい。
この『NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ』で主演のルーク・エヴァンスが演じるのは、悪の塊のような男。そんな男が、映画の冒頭では、罪のない顔で女性とドライブをしている。そこに地元の強盗団が登場してくる。
地元の強盗団も相当なワルなのだが、常識レベル。対するイケメン男の異常度はマックス。殺しの方法からして冷酷かつ個性的だ。被害者と加害者の逆転現象が起きてくる面白さ。
サスペンスを盛り上げる要素の一つに、悪の目盛りがどこまで振りきれるのか、男の正体の全体像が、なかなか見えてこないところにある。さらに男のビジュアルの絵になるようなかっこ良さが、不気味なスリルをもたらす。
ルーク・エヴァンスは、そんな男を実に見事に演じきっている。このウェールズ出身の元ミュージカル俳優は、どちらかというと素朴で実直ないい人なのだろうと私は勝手に思っていた。元がいい人ほど、ためらいなく凄みのある悪を演じることができるのかもしれない。
さらに感じたのは、この作品は、日本人にしか作れない映画なのではないかということ。色気のある悪人と言えば、歌舞伎の”色悪(いろあく)”だ。色悪は、美しい二枚目だけど冷血で悪事を働く。
『四谷怪談』の伊右衛門や、『累(かさね)』の与右衛門など江戸後期に活躍した4代目鶴屋南北の作品に出てくる役柄だ。
様式美を感じさせる殺し方や、見栄を切っているようなルーク・エヴァンスの姿に、北村龍平監督がこの映画で目指したのは現代の鶴屋南北ではないのか、なんて考えてしまった。 (オライカート昌子)
NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ
2013年4月27日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開
公式サイト http://www.finefilms.co.jp/noonelives/
上映時間 87分
R18+
配給 ファインフィルムズ