昔、スマーフショップで働いたことがある。都内の恵比寿と渋谷の中間ぐらいにあって、人通りも少ない住宅街の一角。お客もほとんどいなかった。店の中には大量のスマーフが並んでいて、私の仕事は、並べ替えたり、ホコリを払うこと。オーナーは、元歌舞伎の役者さんだった。よっぽどスマーフが好きだったんだろうな。

スマーフが好きな人は、映画の世界でも多いのだろう。スマーフ映画は実写とCGを組み合わせた劇場版が、前三作あった。今回の『劇場版スマーフ おどるキノコ村の時空大冒険(パラレルアドベンチャー)』はリブート版で、メインはアニメだがCGと実写も多少混ざっている。
朝起きたら、歌って踊ってスタートするスマーフの世界。みんなが自分の得意なものを持っていて、充実を味わっている。ところが、自分の得意が見つけられないスマーフがいた。ノーネ―ムだ。そんなスマーフはたった一人。だからみんなが彼の得意を見つけるために協力する。トライ数は一万回以上。そこまでやっても見つけられない。ところがある日、ノーネームは、魔法が使えることに気がつく。魔法スマーフの誕生か? そんな中、パパスマーフが誘拐されてしまう。そこから救出ミッションの開始だ。舞台はパラレルワールド。

『劇場版スマーフ おどるキノコ村の時空大冒険(パラレルアドベンチャー)』のパラレルワールドは、まるで『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』や、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』並みの奇妙な世界も出現する。パラレルワールド映画によくあるように、めまいに似た混乱もあるけれど、ラストは鮮やかに気分良く着地する。

私が昔勤めていたスマーフショップの光景を思い出すと、それぞれの個性と得意を持ったスマーフがいた。みんな違う。そこがいい。そこにスマーフが愛される理由がある。スマーフは、喜びとか楽しさとかを思い出させせるおまじないのような力があることも忘れたくないポイントだ。得意なこと、好きなことがあること。そして、歌って踊る毎日って夢のようではないだろうか。スマーフは、そういう祝祭的な毎日を思い出させてくれる。
劇場版スマーフ/おどるキノコ村の時空大冒険(パラレルアドベンチャー)
2025 年 9 月 19 日(金) 全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
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