映画『search/サーチ』レビュー(感想)

映画『search/サーチ』レビュー(感想)

『search/サーチ』は斬新な手法が語りの武器になっている。衝撃の結末度も大きい
子供が、あるいは大切な人が、一瞬でも行方がわからなくなれば、アタフタしない人はいない。どれほどの憔悴と不安に駆られるか。悪い予感と希望がない交ぜになる複雑な心境になる。そんな状況を斬新な映像と息詰まる緊張感と共に描いた作品が『search/サーチ』だ。高校生の娘が行方不明になった父親が、娘の行方を捜して、細い手がかりを一つ一つ辿っていく。ラストには驚きも待っている。

『search/サーチ』の肝は、PC画面上でストーリーが全て描かれること。オープニングシークエンスの家族の歴史は、Windows XP上で懐かしく細やかに描写され、それが時間の経過とともにmacや新品PCに置き換わる。娘を探す父親の心の揺れは、焦燥感とともにマウスの動きで伝えられる。斬新なだけでなく効果的。

母親を三年前に亡くし、二人家族の何気ない日常を送っていた父のデビッドと娘のマーゴット。ある朝、ゴミを捨てないまま登校したマーゴットにfacetimeで注意のメールを送ったデビッド。マーゴットからの返信は、友達の家で夜通し勉強するというものだった。真夜中にマーゴットから何度か着信があるが、熟睡していたデビッドは気づかなかった。だが、その連絡を最後に、マーゴットは姿を消してしまう。

最初はあまり心配していなかったデビッドだったが、次第に不安が募り、マーゴットの友達や、ピアノのレッスン教室など、いろいろな手がかりを追う。次第にわかってきたのは、自分がマーゴットのことをちゃんとわかっていなかったという驚愕の事実。ピアノもやめ、学校ではほとんど一人で過ごしていたマーゴット。犯罪事件の可能性も持ち上がり、報道も大きくなっていく。

『search/サーチ』の監督は、27歳のインド系アメリカ人のアニーシュ・チャガンティ。今回が初めて劇場用の長編作品。主演のデビッド・キムは、『スター・トレック』シリーズのジョン・チュー。マーゴット役のミシェル・ラーと共に韓国系アメリカ人というように、国際的な人材が揃った作品だ。

『search/サーチ』の特徴は、人の思いや温かさ、あるいは苦味などが直接的に伝わってくるところにある。いくつかのシーンでは、ナイフが突き刺さるような思いにも駆られた。新規な手法に注目させられる作品だが、手法は決して形だけではなく、語りのための一番の武器となっているのだ。そこに一番惹きつけられる。

(オライカート昌子)

映画『search/サーチ』作品情報

監督;アニーシュ・チャガンティ
キャスト;ジョン・チョー (デビッド・キム)
デブラ・メッシング (ヴィック捜査官)
ジョセフ・リー     (ピーター)
ミシェル・ラー     (マーゴット)
2018/アメリカ映画/サスペンス・ミステリー/102分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト http://www.search-movie.jp/