『アウトポスト』映画レビュー

映画『アウトポスト』は、実話を基にしたミリタリー・アクション。アフガニスタン・ヒンドゥークシュ山脈に位置する前哨基地(アウトポスト)での激戦を描いている。基地での様子は人間味を感じさせ、戦闘はリアルだ。

なぜ映画化されることになったのか。それは、のちに「カムデシュの激戦」と呼ばれるほどの極端な戦闘だったためだ。まるでアフガニスタンの『300 〈スリーハンドレッド〉』ならぬ、「54」だ。数百人対、54人。カムデシュのキーティング基地は、弱点だらけだ。周囲に高い山脈があり、お椀の底のような谷にある。敵からは丸見えで、多勢で襲ってきたら逃げ場がない。最終的には、数百人の敵が総攻撃してくることになる。

武器の故障や弾薬不足など、不運も重なる。指揮官の大尉は(臨時の中尉の指揮官も含めると)5人登場する。彼らは、個性も方針もバラバラだ。指揮官が変わるたび、状況は少しづつ悪化していく。最初の指揮官、キーティング大尉は、ほがらかな人格者で地元の村人の信望も厚かった。ちなみに、アフガニスタン戦争における前哨基地の使命は、補給基地としての役割と共に、地元民との信頼を築き、村人を守りつつ、タリバンからの攻撃を防ぐこともあった。

アウトポストの画像キーティング大尉の後任でやってきたイェルカス大尉は、強面で村人との対話も厳しい態度で臨む。現地の人との関係も前任者とは変わってしまう。3人目の大尉のブロワードとなると、自室にこもったままで、トイレに行くことすら厭う。兵士の信頼度も低下気味だ。

キーティング基地は閉鎖が決まるが、いつになるのかがはっきりしない。兵士たちは宙ぶらりんの状況で、死と隣り合わせの日常を送っている。密やかな足音で、最後の日は近づいてくる。不運は最後までまとわりつく。『アウトポスト』の戦いは、アフガニスタン戦争史上最も多くの勲章を受賞しているが、現実以上に英雄視するわけではない。生活の延長線上にある戦闘。その中での一人一人の兵士の普段着の姿が描かれている。それは激戦の最中でも同様だ。

不運が重なった時、どう対処するのか。今まで養ってきた自分が試される時だ。その過酷な現実。やるべきことをやれるだけやるだけ。そのシンプルな原則が心に残る。

オライカート昌子

アウトポスト
(C)2020 OUTPOST PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
2019年製作/123分/G/アメリカ
原題:The Outpost
配給:クロックワークス
監督:ロッド・ルーリー 脚本:エリック・ジョンソン、ポール・タマシー
撮影:ロレンツォ・セナトーレ 編集:マイケル・ドューシー 音楽:ラリー・グループ
出演:スコット・イーストウッド ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ オーランド・ブルーム ジャック・ケシー マイロ・ギブソン