
『この夏の星を見る』には、新しい感性がある。奇抜ではないし気負いもないけれど、映像やストーリーの進め方に新鮮な躍動感がみなぎっている。運びが伸びやかでスムース。優しさもある。登場人物の鮮やかさと活気も飛び抜けている。映画自体が、日差しが強い中で飲む飲む泡立つサイダーのような感じだ。 今までの世代のクリエーターとは明らかに違う。映画の世界が若い世代に移ってきているのだ。
『この夏の星を見る』は、2020年に発令された緊急事態宣言下、部活動を制限された中高生たちが挑んだ「オンラインスターキャッチコンテスト」を中心に話が進む。茨城、東京、長崎五島の中高生が始めたこの活動は、新たな世界に広がっていく。
タイトル前のシーン、2019年。主人公・溪本亜紗(桜田ひより)が茨城県立砂浦高校の天文学部へ入部しようとするところは、シャープなカットが目にまぶしく映る。夏の合宿でのスターキャッチコンテストは、とりわけカッコいい。スターキャッチコンテストは映画の根幹。だが言葉だけではイメージが湧かない。「こんなに素敵なコンテスト」だよ、と最初に見せてくれるところが親切だ。
2020年の春間際。コロナ禍がスタートする。あの騒動の見せ方も上手い。茨城県立砂浦高校の亜紗にとっての危機は、合宿が行われないのでスターキャッチコンテストも行われない可能性だ。それからの開催されるまでの思いがけない流れがミステリアスだ。
『この夏の星を見る』の原作は辻村深月氏の同名小説。監督は、1993年生まれの山元環氏。脚本は、1996生まれの森野マッシュ氏。若い世代が映画の質を変えていく嬉しい予感がある。映像に触れた経験が上の世代と違う。見せ方に余裕とスタイルがある。
『この夏の星を見る』は、コロナ時代の宙ぶらりんの状況を逆手にとっている。 制限された地上と果てしない宇宙の広さ。視野が逆転していくおおらかさと潔さが映画の味を決定づけている。
この夏の星を見る
7 月 4 日 (金) 全 国 公 開
配給 : 東映
©2025「この夏の星を見る」製作委員会
原作 : 辻村深月「この夏の星を見る」(角川文庫/KADOKAWA刊)
出演 : 桜田ひより
水沢林太郎 黑川想矢 中野有紗 早瀬憩 星乃あんな
河村花 和田庵 萩原護 秋谷郁甫 増井湖々 安達木乃 蒼井旬 中原果南 工藤遥 小林涼子
上川周作 朝倉あき 堀田茜 近藤芳正
岡部たかし
監督 : 山元環
脚本 : 森野マッシュ
音楽 : haruka nakamura
企画 : FLARE CREATORS
総合プロデューサー : 松井俊之(FLARE CREATORS)
プロデューサー : 島田薫(東映)