
「秘顔-ひがん-」には強い没入感がある。韓国映画のジャンルの幅広さと品質の素晴らしさには定評があるけれど、「秘顔-ひがん-」は18禁ミステリー/サスペンスのジャンルにおいて満足度の高い作品だ。
ソンジン(ソン・スンホン)はベルリンから戻ってきて韓国のオーケストラで指揮者の座についていた。彼の婚約者のスヨン(チョ・ヨジョン)はチェリストだ。そんな彼女が消えてしまった。残したビデオメッセージには「あなたと過ごせて幸せだった。でも確信が持てないの」とあった。
スヨンはどこへ行ってしまったのか。戻って来るのだろうか。ソンジンはオーケストラのチェリストの控えを選ぶつもりはなく、スヨンの帰りを待っていたが、そのとき、ソンジンが愛するシューベルトを、同じように愛する新たなチェリストが現れた。
迷宮ばりのミステリーは伏線の巧みさが命。滲んでくる違和感は回収後のデザートになる。そのあたりの「秘顔-ひがん-」の上手さには舌を巻く。観客に隠された顔が明らかになる段階の二転三転には驚かされるけれど、「心の底」にあるものが吹き出してくる後半の引きの強さと没入感は凄まじい。どうなるのか気になって一時も目が離せない。
ところで、『秘顔-ひがん-』の一番の美点に感じるのは18禁部分も含めた品格にある。オーケストラや極上生活を描いているのだから、上品であるべきだ。欲望や腹の底に秘めた思いの重さにもかかわらず、品を失わない。その適度なバランス感覚は称賛ものだ。そのおかげもあり、三人の主要登場人物に愛着を覚えるようになった。サスペンス映画では珍しいことだ。
監督は『情愛中毒』のキム・デウ。主人公の指揮者・ソンジン役は「秋の童話」「エデンの東」などのソン・スンホン。婚約者・スヨン役は『パラサイト 半地下の家族』のチョ・ヨジョン。スンホン&ヨジョンは、キム・デウ監督と『情愛中毒』に続く再タッグ。ミジュ役は「財閥 x 刑事」「財閥家の末息子〜Reborn Rich〜」『コンジアム』などの注目女優パク・ジヒョン。
秘顔-ひがん-
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6月20日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:シンカ/ショウゲート
監督:キム・デウ『情愛中毒』 出演:ソン・スンホン「エデンの東」 チョ・ヨジョン『パラサイト 半地下の家族』 パク・ジヒョン「財閥 x 刑事」
2024年/韓国/115分/1:2ユニビジョン/カラー/5.1ch/字幕翻訳: 田村 麻美/原題:히든페이스/R18
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