『マイ・ハート・パピー』映画レビュー 癒しとちょっぴり苦みもプラスされた至福の犬映画

『マイ・ハート・パピー』は、刺激的な作品が多い韓国映画において、久々に登場の癒し感覚あふれ、心を温めてくれる優しさ、楽しさ、そしてちょっと苦みもプラスされた幸福作品だ。

ミンス(ユ・ヨンソク)は普通の会社員。彼にとって命がけレベルで大切なのは、定時退社。というのも、家には愛犬“ルーニー”が待っているからだ。彼にとって大切なのは、ルーニーだけではない、三年付き合った恋人もいた。彼は、その日、ついに結婚を申し込もうとしていた。ところが、その幸せな日々は、突然終わる。ルーニーとこれ以上一緒に暮らせなくなってしまう事実に突き当たってしまう。

一方、ミンスのいとこのジンソク(チャ・テヒョン)は、野心的にオープンしたカフェをつぶしてしまい、金欠に苦しんでいたところだった。そんなジンソクにミンスはルーニーについて相談。ジンソクは、まず、SNSをt通じて、ルーニーの里親を探すことを提案する。

『マイ・ハート・パピー』を見て思い出すのは、ウベルト・パゾリーニ監督・脚本『いつかの君にわかること』だ。『いつかの君にわかること』は、自分が世を去る前に息子の里親を探す映画だった。

里親探しという題材は似通っているが、違いもある。『マイ・ハート・パピー』は、ロードムービーの要素が、映画の大きな枠となっている。そこで出会う人たちの姿は様々だ。ミンスとジンソクの二人は、新たな犬との出会い、人々との出会いによって、自分に向き合う必要性に突き当たる。

今まであいまいだった、何を大切にしたいのか、どんな人生を望んでいるのかをしっかり見つめること。それがはっきり見えてくる。

旅や出会いは、自分をリフレッシュすること、新たな自分に出会うこと。その誰にとっても恩恵となることを、優しく楽しく伝えてくれる映画が、『マイ・ハート・パピー』だ。

監督は、本国で驚異的な大ヒットを記録した『ミッドナイト・ランナー』のキム・ジュファン。主演のミンス役に、『応答せよ1994』『バニシング 未解決事件』、『賢い医師生活』のユ・ヨンソク。ジンソク役には、『猟奇的な彼女』で日本でも大ブームを巻き起こしたトップスター俳優チャ・テヒョン。この二人の絶妙なコンビぶりと、大量の愛らしい犬たちの登場は、まさに、至福の映画体験だ。

(オライカート昌子)

マイ・ハート・パピー
2024年1月2日(火)シネマート新宿ほか全国順次公開
配給:AMGエンタテインメント
ⓒ 2023. Yworks Entertainment Co.,Ltd. All rights reserved.
監督・脚本:キム・ジュファン『ミッドナイト・ランナー』
出演:ユ・ヨンソク「賢い医師生活」、チャ・テヒョン『猟奇的な彼女』、チョン・インソン「ウラチャチャ My Love」、パク・ジンジュ『スウィング・キッズ』、キム・ユジョン「雲が描いた月明かり」、イ・ホジョン『ミッドナイト・ランナー』、ウ・ドファン『ディヴァイン・フューリー/使者』
2023年/韓国/韓国語5.1ch/114分
公式サイト:https://myheartpuppy.jp