『ビルド・ア・ガール』映画レビュー 太っちょ女子版プラダを着た悪魔はめちゃパワフル

新進太っちょ女優、ビーニー・フェルドスタインが、映画『ビルド・ア・ガール』をパワフルなカラーで染め上げている。憂鬱だったら、ビーニーの魔法にかかってみることをお勧めしたい。

ビーニー・フェルドマンは、2020年の忘れがたい作品、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』でブレイク。兄は、アカデミー賞ノミネート俳優のジョナ・ヒルだ。そういえば、顔だけでなく、押し出しの強さや、繊細さも似ている。


『ビルド・ア・ガール』では、妄想ばかりが突っ走る、冴えない16歳ジョアンナとして登場。家族七人が、イギリス郊外のつつましいアパートに住んでいる。父は失業手当を受け取り、内緒で犬の繁殖もしているけれど、ジョアンナが詩の大会に参加して、中継されたテレビ番組で、犬のことをバラしてしまったせいで、家族に多大な迷惑となってしまう。

何とかお金を稼がなくてはならないと、ロックミュージックのことは何にも知らないのに、ロック音楽雑誌のライターとして応募。それから、彼女のペンネーム、ドリー・ワイルドとしての大変身と冒険のストーリーが始まる。

脚本のキャトリン・モランの実体験がもとになっているため、あり得ないシンデレラストーリーにリアルな肌触りがある。この成り上がりストーリーは、まさに、イギリス90年代の高校生太っちょガール版、『プラダを着た悪魔』なのだ。

ほのかなラブストーリー要素が実にいい。初めてのインタビュー取材で出会ったロックスターのジョン・カイトと一晩ともに過ごすことになるのだけれど、ジョン・カイトは、自分をわきまえている。大人が少女を前にしたとき、どういう態度をとればいいのか、素晴らしいお手本だ。


そんなジョンにジョアンナは強烈に惹かれて、インタビュー記事は、恋をした乙女のファン心理満載のものになる。辛口ライターだったはずのドリー・ワイルドらしくもなく。当然ライター/評論家仕事はクビ直前。

そこから、彼女は再び変身。今度は超辛口ライターだ。それも結局は失敗につながってしまうけれど、ジョアンナはさらに強くなり、しなやかで美しくなる。

ジョン・カイトを演じるのは、人気テレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』で悪役中の悪役、シオン・グレイジョイ役を演じたアルフィー・アレンだ。映画に進出しても、やっぱり悪役続きだったけれど、このジョン・カイトの役は、彼の優しさ、繊細さが垣間見えて心に花が咲いたような気分にさせられる。悪役がいいというのは、基本がいい。そう思っているけれど、彼がそれをしっかりと体現してくれている。

主演のビーニー・フェルドスタインも硬軟、美醜を変幻自在に見せてくれて楽しめるけれど、純粋な優しさを集約してみせてくれるアルフィーのジョン・カイトは、まさに映画の最後に、「女の子の一番大切なものをささげられるにふさわしい。

(オライカート昌子)

ビルド・ア・ガール
10/22(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
© Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019
【原作】 キャトリン・モラン著「How to Build a Girl」 【脚本】 キャトリン・モラン
【監督】 コーキー・ギェドロイツ 
【製作】 アリソン・オーウェン『ウォルト・ディズニーの約束』『エリザベス』、デブラ・ヘイワード『レ・ミゼラブル』『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ
【出演】 ビーニー・フェルドスタイン、パディ・コンシダイン、サラ・ソルマーニ、アルフィー・アレン、フランク・ディレイン、クリス・オダウド、エマ・トンプソン
【配給】 ポニーキャニオン、フラッグ 【提供】フラッグ、ポニーキャニオン
【原題】『How to Build a Girl』 2019年/イギリス/英語/105分/DCP/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/R-15
公式サイト:buildagirl.jp 公式TW/IG:@buildagirl_jp #ビルド・ア・ガール、#ビルドアガール