『アラビアンナイト 三千年の願い』映画レビュー ジョージ・ミラー監督の熱い心は健在!

最近はファンタジー映画が滅多にないとお嘆きのあなた、豪華絢爛で心温まる、残酷でいてロマンチック、歴史の荒波の中を大航海するような映画が見たかったら、『アラビアンナイト 三千年の願い』で心にビタミン補給して欲しい。

『アラビアンナイト 三千年の願い』の監督は、ジョージ・ミラー。前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 で映画ファンを熱狂させた。前作とは違う作風かと思いきや、『アラビアンナイト 三千年の願い』は違った種類の熱さがある。熱気がどんどん高まって、最後はしみじみとした後味が心にしみる、絶妙な構成だ。

『アラビアンナイト 三千年の願い』は、アラビアンナイトに題材をとっている。ディズニーの『アラジン』と同じだが、違うところがポイントだ。ジンが出現するのは同じだが、ジンがかかわるのはいろいろな時代のいろいろな女性。その女性たちの造形・あり方が、興味を引く。ジョージ・ミラー監督が力を込めて描く、女性礼賛の姿勢が見えてくる。

極度に美しい女性、シバの女王。美しいとは言えないオスマン・トルコ時代の宮殿に使える奴隷の女性。王の心を奪った美しい奴隷も登場。別の王が溺愛する大女たちが大挙してスクリーンを埋め尽くすシーンも目を奪う。幼くして両親を亡くし、若くして結婚を強いられ、籠の鳥生活の中、知恵と知識が抜群の女性。

主人公は、アリシア・ビニー博士(ティルダ・スウィントン)。物語論の専門家。一人暮らしで身寄りもなかったが、何一つ不自由のない、満ち足りた生活を送っていた。講演のため、トルコのイスタンブールへ行った先で、不思議なことが起き始める。そしてグランバザールで、目に入った美しいガラスの瓶を手に入れる。ホテルに帰った後、歯ブラシで汚れを落とそうとしているときに、魔人(ジン)(イドリス・エルバ)が出現する。

彼は言う。三つの願いを叶えさせてほしい。アリシアは「?」。彼女は、全てに満ち足りていて、自足していたので、叶えて欲しい願いはない。とにかく、目の前から消えてほしい。だが、ジンは、アリシアが三つの願いを口にしない限り自由になれない。

アリシアにジンが語るストーリーが、前半の流れとなっている。アリシアは願いを見つけることはできるのか。

願いを見つけようとすることは、自分を見つけようとすることだ。自分の中から生まれる欲望を、しっかりと認めることは、たとえ日々満足していても、幸福と、さらなる成長をもたらしてくれる。ジョージ・ミラー監督の、女性のためのエール映画としてそんなメッセージも感じられる。

ところで、最初のシバの女王のストーリーでは、一つの疑問が答えられないままになっている。その疑問が、アリシアの願いとともに最後に生きてくる流れに注目してほしい。

(オライカート昌子)

アラビアンナイト 三千年の願い

2月23日(木・祝)よりTOHOシネマズ 日比谷他にて全国公開
配給:キノフィルムズ
© 2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.
監督・脚本・製作:ジョージ・ミラー
出演:イドリス・エルバ、ティルダ・スウィントン
【2022年|豪・米合作|英語・トルコ語|カラー|スコープサイズ|5.1ch|108分|原題:Three Thousand Years of Longing|字幕翻訳:松浦美奈|PG12】
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
公式HP:https://3wishes.jp
公式Twitter:https://twitter.com/3wishes_jp