厄介な映画だ。笑。
映画の知識を試されるような感覚があるからね。
映画のオマージュが満載なのだ。
それもサイエンス・フィクション映画、メインでね。
それはご存知、スピルバーグの「E.T.」から始まるわけさ。
休む間もなく、「未知との遭遇」(選ばれし人間と異星人とのコンタクト)、
「ウォーリー」(惑星にひとり残された可愛いロボットの運命)、
「2001年宇宙の旅」(謎の物体の出現で進化していく人類を描く哲学図鑑)、
「サイン」(ある日、突如として畑に現れた暗号の意味)、
「スター・トレック」(船長以下、ワンチームで宇宙を冒険するカルト作品)、
「メン・イン・ブラック」(異星人飛来を隠密に片付けようとする特殊部隊)、
「ゼロ・グラビティ」(宇宙空間で経験する最強最悪の脱出劇)、
「エイリアン2」(絶対生物に反撃していく女宇宙飛行士の恐怖)、
そして、テレビシリーズ「X–ファイル」(耳に残る、あのテーマ曲)にも及ぶ。
そこにはスタッフの凄まじいパワーと根気があったはずだ。 なんたって、カタチの異なる25枚の静止画を撮影して、ようやく1秒の動きになる粘土アニメーションだからね。
増してや、画面の大きさがシネスコサイズとデカくなったから、セットの大きさも巨大だったに違いない。
だから劇場で2度目を見たら、オマージュは新たに10個ほど発見できるだろうな。
なるほど、リピートが楽しみな映画でもある。
心配はご無用。 なにも、映画通御用達の作品ではない。
面白さテンコ盛り、笑い声必至の映画なのに、劇中セリフはひとつも無し。
この作り手の技をじっくりと味わってほしい。
さすが! 世界中のアニメ映画賞を片っ端から根こそぎ獲得、
そして4度のアカデミー賞に輝く天才集団アードマンの作品らしい映画なのだ。
ひつじのショーンが主人公だから、そもそもセリフが無い作りなんだけど、ひつじのお相手が宇宙人だから、そもそも会話が成立しないのだよ。あはは。
文化、カルチャー、そもそも常識もまったく違う異種同士。
些細な行動も誰にでも分かりやすくするために、
当初ひつじのショーンに声をつけることも議論されたというけど、
「それは神への冒涜。それじゃショーンじゃなくなる!」となったんだって。
問題解決は、その宇宙人が『テレキネシス』(念力)を操ることにあったわけ。
これでひつじと宇宙人の意思疎通が叶うんだけど、
その念力が想像を絶する騒動を巻き起こす原因にもなるわけだね。
SF仕立ては、「10年ほど前からのアイデア」と制作秘話にある。
今回は、このテレキネシスがミソ。
アードマンの面目躍如たる最高のエンタテインメントがここにある。
ズバリ、「映画ひつじのショーン UFOフィーバー!」は、子供から大人まで満面の笑顔にさせる魔法の映画だ。
最高のクリスマス・プレゼントになるはずだ。
そーいえば、何十年も前になるけど、来日したパントマイムの神様、
マルセル・マルソーの舞台を見に行ったっけ。
無声映画のチャップリンに憧れて、パントマイム・アーティストになったマルセル・マルソーの舞台は今でも鮮明に覚えている。
隣席に座った小学生らしき女の子、マルソーの幻想的な動きと構成に、
初めはこわばって不思議な顔つきだったけど、
終盤は笑い転げて、カーテンコールではついに感涙してたっけ。
「映画ひつじのショーン UFOフィーバー!」は、
そんなテイストをもった、もう一度言うが、魔法の映画である。
ぜひご覧あれ。売店のぬいぐるみ、欲しくなること請け合いだ。
(武茂孝志)
「映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!」
12月13日(金)、全国ロードショー
■監督:リチャード・フェラン、ウィル・べチャー
■脚本:マーク・バートン、ジョン・ブラウン
■製作:アートマン・アニメーションス、スタシオ・カナル
2019/イキリス・フランス/アニメーション/英語/カラー
原題 Shaun theSheep Movie: Farmageddon
■配給:東北新社STAR CHANNEL MOVIES
■宣伝:樂舎
© 2019 Aardman Animations Ltdand Studiocanal SAS. All RightsReserved.