レイノルズ。それがエドガー・アラン・ポーのほぼ最後の言葉だった。レイノルズが何なのか、人の名前なのか、誰にもわからない。ミステリアスだ。その謎を解いていくのが、『推理作家ポー 最後の5日間』のプロットである。
凄惨な殺人事件が次々と起きる。その事件は、ポーの作品と深い関係があるのが明白であり、ポーは残された人生最後の時を素人探偵として過ごす。作品は、真相が不明なまま41歳でこの世を去ったポーの死の謎にも一つの答えを出していく。
ポーといえば、推理小説ジャンルを開拓した先駆者である。暗く薄気味悪い独特な陰を持った作品の印象が強いが、実際のポーがどういう人だったのかは、わかりようがない。
だからこそなのか。『推理作家ポーの最後の五日間』ではポー役に、ジョン・キューザックを起用。ジョン・キューザックといえば、普通の男を自然体で演じて共感を誘うタイプ。いわばポーのイメージと逆に行く、驚きのキャスティングがこの作品のトーンを決めている。
ジョン・キューザックのポーは、常識的で肩肘をはらず、モダン。明るくもあり、時にハッピーにも見えなくもない。ポーであろうと誰であろうと、ジョン・キューザックは自分の王道を外さない。
エメット・フィールズ刑事は、成り行きで、ポーの相棒となる。演じているのは、『インモータルズ 神々の戦い』でゼウスを演じ、注目を浴びた新鋭ルーク・エヴァンス(エヴァンズ)。
ジョン・キューザックの自然体ポーとは対照的に、ルークの演技は極めて古典的で時代がかっている。そのためか、2人の関係はラストまでは、ちぐはぐな印象がある。やっとラストで、鮮やかにコンビの結晶が見えてくる。
監督は『Vフォー・ヴェンデッタ』のジェームズ・マクティーグ。狙ってそうしたのかどうか、ジョン・キューザックのポーは、今を生きている人のように親近感を与えてくれるためだろうか、ラストに不思議な余韻が残る。 (オライカート昌子)
推理作家ポー 最後の5日間
R15+
公式サイト http://www.movies.co.jp/poe5days/