最近1980年代、70年代を舞台にした映画が増えているような気がする。感受性豊かな子供時代をそのころにすごした映画人世代が主流になってきたからなのだろうか。『SUPER 8/スーパーエイト』のJ・J・エイブラムス監督も1966年生まれだ。
『SUPER 8/スーパーエイト』は、製作で参加もしているスティーブン・スピルバーグ監督の80年代の作品、特に『E.T』を意識した作品だ。郷愁を感じてしまうのは、わたしもまたJ・J・エイブラムス監督とほぼ同じ世代だからだ。
SUPER 8とは8ミリフィルムで撮る映写機のこと。街で騒動が起ころうと、得体の知れないものが跋扈しようと、主人公の少年たちは、8ミリフィルムで撮る映画作りをあきらめようとしない。J・J・エイブラムス監督が一番描きたかったのは、映画作りに情熱を燃やしたころ、初恋に胸を焦がしたころの青春の思い出であることはあきらかだ。
だが、物語はそれだけではとどまらない。映画作り、仲間同士の友情、淡い初恋を巻き込みながら、アクション・SF・サスペンスと趣を変えていく。その流れがこの映画の一番のみどころだ。
そして、さまざまなテーマを内包していることが、この作品のいいところでもあり、物足りないところでもある。郷愁をかきたてるドラマにだけに焦点を当てれば、J・J・エイブラムス監督の持ち味のシャープなアクション描写が薄くなってしまう。かといって、アクション・サスペンスだけを描けば、監督にとって今までやってきたことと何の変わりもない。
ただ、作品の後味と個性を考えると、J・J・エイブラムス監督の思惑を超えて、アクション・サスペンスのシーン満足度のほうが高い。やっぱり、J・J・エイブラムス監督は、J・J・エイブラムス監督。スピルバーグにはなれなかったのかもしれない。決してそれは、悪いことではないのだけれど。(オライカート昌子)
・2011年 アメリカ映画/114分/監督:J・J・エイブラムス/出演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー、ロン・エルダードほか、
『SUPER 8/スーパーエイト 』オフィシャルサイト
・2011年6月24日(金) 全国超拡大ロードショー