『アリス・イン・ワンダーランド』のティム・バートン監督の原点回帰とも言えるブラック・ファンタジー。1984年に製作した短編を長編として蘇らせた。愛犬スパーキーを事故で失ってしまった科学少年ヴィクターが、極秘技術でスパーキーを生き返らせたことから起きる騒動を描く。
ここ数年、大作系が続いたバートン監督の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』時代を髣髴とさせる作品。個人的には彼の作品でベストと感じた。自らの体験を基にしているだけあり、思い入れも特別なのではないか。とにかくスパーキーが可愛い。何もかもフンフンと嗅ぎ回る犬らしい仕草には笑いを誘われる。ヴィクターの周りのキャラクターが危険人物ばかりなのも面白い。変な予言をする猫を飼ってる女の子、競争心が異常に強いトシアキ(日本人?)、マイペースすぎるクラスメイト・エドガー・・・。彼らがスパーキーの蘇生に気づき、近く開かれる科学展を前にヴィクターを恐喝し始める頃から物語はダークに転じていく。身近な動物の死体やかつてのペットの墓を掘り返して蘇生を試みる少年たち。その顛末は・・・。
後半はちょっと怖くて、かなりスリリング。科学の先生の「実験には愛情を込めること」の言葉が響く。いたずらに生き返らせられた動物たちは怪物となって暴れ始め、街を破壊。その騒動に巻き込まれてしまったヴィクターとスパーキーの運命が終盤のクライマックスだ。
1931年の映画『フランケンシュタイン』をなぞった展開が上手い。少年の成長物語としても上手くできていて、最後は泣かせる。命の大切さ、人や動物に対する愛情の力を教えてくれる。年代を問わずに楽しめる映画だ。全編モノクロにしたのも成功。(池辺麻子)
フランケン・ウィニー
2012年12月15日(土)3D/2D同時公開
公式サイト http://www.disney.co.jp/movies/frankenweenie/