『グランド・イリュージョン』映画レビュー

CGを極力排した鮮やかなトリックに心地良く騙される。4人のチームワークが抜群。

映画とマジックは相性がいい。どちらもいい意味で気持ちよく観客をだましてくれるからだ。映画好きでもマジック好きでも、見逃せないのがフランス人監督ルイ・ルティエの映画『グランド・イリュージョン』である。

壮大なマジックの醍醐味をそのままスクリーンに移植。ストーリー展開のワクワク感、豪華なキャスト陣が織りなすだましの高等テクニックなど、とにかく見所の多い作品なのだ。

四人のマジシャンが、一人ずつ紹介される冒頭シーンのかっこ良さには脱帽。それぞれの俳優が、カード、メンタリズム、イリュージョンマジック等をマスター。ＣＧ抜きの本物のマジックを見せてくれるのだから、豪華この上ない。

彼ら４人は目的が不明なまま、謎の人物（黒幕）に集められ、「フォーフォースメン」を名乗って、チームとしてマジックショーを行うことになる。ショーでは期待通りの超絶マジックが行われ、タネもちゃんと開かされる。これだけでも見ていてラッキーと思ってしまう。

最初のラスベガスでのショーで、観客の目の前でフォーフォースメンは、フランスの銀行からお金を奪ってしまう。そのせいで警察やインターポールに追跡されることに。

フォーフォースメンのリーダー、カードマジック担当のアトラス役には、ジェシー・アイゼンバーグ。『ソーシャル・ネットワーク』と同様、マシンガントークが炸裂。

紅一点の脱出マジックが得意なヘンリーには、『華麗なるギャツビー』のマートルが記憶に新しいアイラ・フィッシャー。彼女の男勝りの存在感、可憐さと人好きのするユーモアは映画に華やかさをもたらす。

メンタリストのメリットには、最近好調なウディ・ハレルソン。船上スリマジックが得意なジャックにはジェームズ・フランコの弟のデイブ・フランコ。『ウォーム・ボディーズ』にも出演していた若手である。彼がブレイクしたきっかけは、日本では未公開（DVDリリースのみ）ながら、全米大ヒットの『２１ジャンプストリート』。両方見てたらクスッとするせりふサービスがある。

４人のバランスが絶妙。誰が欠けてもこれほどの効果はあげられなかっただろう。彼らを追う警察官ディラン・ローズにはマーク・ラファロ。フランスから出張してくるインターポールのアロマ役にはメラニー・ロラン。モーガン・フリーマン、マイケル・ケインがスクリーンを引き締める。

フォーフォースメンの目的は？　彼らの黒幕は？　警察を出し抜くことができるのか？　など、いくつもの謎が、私たちを映画の世界に強く引きずり込む。誰もが怪しく、誰もが黒幕に見えてくるところで、最後に驚愕のトリック（騙し）が明かされる。

全米で息の長いヒットとなった本作は、もう一度みたいと思わされる作品なのだと思う。ラストのどんでん返しは、それってあり？と思わされる人もいるだろう。ルイ・レテリエ作品は、アクション系が多く、どちらかというと緻密な作りというよりは大味なタイプでもある。

ラストのインパクトは、見せ方によってはもっと最大限の効果が上げられたかもしれない。とはいえ、気持良く騙されることは至福である。それを改めて確認させられた一作なのは間違いない。　　　　　（オライカート昌子）

グランド・イリュージョン
2013年　アメリカ・フランス映画／サスペンス／116分／原題：NOW YOU SEE ME／監督：ルイ・レテリエ／出演・キャスト：ジェシー・アイゼンバーグ（Ｊ・ダニエル・アトラス）、マーク・ラファロ（ディラン・ローズ）、ウディ・ハレルソン（メリット・マッキニー）、メラニー・ロラン（アルマ・ドレイ）、アイラ・フィッシャー（ヘンリー・リーブス）、デイヴ・フランコ（ジャック・ワイルダー）、マイケル・ケイン（アーサー・トレスラー）、モーガン・フリーマン（サディアス・ブラッドリー）／配給：KADOKAWA
10月25日（金） 新宿ピカデリー他 全国ロードショー
『グランド・イリュージョン』公式サイト　http://www.grandillusion.jp/