今度のニコラス・スパークス原作作品『セイフ・ヘイヴン』は一味違うミステリー仕立て。ラストのファンタジックなどんでん返しで涙を誘う
マシュマロでコーティングしたような甘くて切なく、しっとりとしたラブストーリーを見たかったら、ニコラス・スパークス原作の映画を選べばいい。『きみに読む物語』『メッセージ・イン・ア・ボトル』、『親愛なる君へ』などのヒット作は、スパークス原作作品がラブ・ストーリーで涙したい女性の心をがっちりつかんでいる証拠である。
だが、そういう映画を見るつもりで『セイフ・ヘイヴン』を見始めると最初のシーンでびっくりする。居心地の良さそうな家が映し出されるとまもなく、そこから血相を変えた女性が裸足で走りでてくるのだ。まもなく、彼女が警察に追われていることも明らかになる。『セイフ・ヘイヴン』は、ミステリーサスペンス仕立てのラブストーリーなのである。
遠距離バスで街を出た彼女は、途中休憩の場所でバスを降り、そこでカフェの仕事を得て、新たな人生を始めようと決心する。そこは海に面した南部の小さな町。天国のような平和で美しい場所である。そこで二人の子持ちの男やもめの商店の店主と知り合い、恋の予感がスクリーンを彩る。このあたりはいかにも王道ラブストーリー的だ。
二人の恋を邪魔するのは、彼女の過去。執拗な警察の手は、彼女を凶悪な犯罪の下手人として全国手配する。彼女はなにをしたのか。いつすべてが明らかになるのだろうか? 謎が、バックミュージックのように映画の背後に流れて、緊張感を煽る。
主演のケイティ役には、ジュリアン・ハフ、シングルファーザーのアレックス役には、『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』のジョシュ・デュアメル。監督にには、、「サイダーハウス・ルール」「砂漠でサーモン・フィッシング」のラッセ・ハルストレム。ニコラス・スパークス原作作品では、『親愛なる君へ』に続いての監督作となる。
ところでニコラス・スパークス原作作品はアメリカ南部を舞台にしたものが多い。というより、最近の映画ではアメリカ南部にロケ地を設定した映画が本当に多いのだ。うだるような気候、独特で半熱帯的な緑の木々とそれに面した沼地や川が一種マジカルな世界を形作るからなのかもしれない。
『セイフ・ヘイヴン』のラストでは、ファンタジックな秘密が明らかになり、映画の余韻をすっかり変えてしまう。乙女や少年の瑞々しい心を失っていなかったら、あなたはきっと涙する。 (オライカート昌子)
セイフ・ヘイヴン
2013年 アメリカ映画/恋愛・サスペンス・ミステリー/116分/原題:SAFE HAVEN/監督:ラッセ・ハルストレム/出演・キャスト:ジョシュ・デュアメル(アレックス・ウィートリー)、ジュリアン・ハフ(ケイティ・フェルドマン)、コビー・スマルダーズ (ジョー)ほか/配給:ポニー・キャニオン
2013年10月26日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開
『セイフ・ヘイヴン』公式サイト http://safehaven-movie.net/