アイアン・フィスト解説・みどころ

(C)2012 Universal Pictures
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アイアン・フィストは、ヒップホップ・アーティストのRZAが、クエンティン・タランティーノのサポートにより、念願だったカンフー映画を監督。主演と音楽、そして『ホステル』などのイーライ・ロスと共に脚本も手がけた。

アイアン・フィストは、奇想天外なアイデアと、豪華スター陣が華やかな戦いを繰り広げるところが一番の見どころ。ワクワクさせられる人も多いはず。

アイアン・フィスト あらすじ

19世紀の中国、ジャングル・ビレッジ(叢林村)では、武装グループ、猛獅会と群狼団が抗争を繰り返していた。鍛冶屋ブラック・スミスは、娼館にいる恋人レディ・シルクのためにお金を貯めようと、双方のために特注の武器を製造していた。

そんなある日、猛獅会のリーダー金獅子は、総督から金塊輸送の護衛を頼まれた。だが、直後に部下である銀獅子に裏切られ殺される。銀獅子は金獅子の息子ゼン・イーにも刺客を送る。

重症を負ったゼン・イーをかくまった鍛冶屋だったが、鍛冶屋も捕まり、銀獅子一味に両腕を切断されてしまう。彼を助けたのは、正体不明のイギリス人、ジャック・ナイフ。鍛冶屋は、両腕を武器に改造し、銀獅子一味と戦う意志を固めた。娼館の女達も抗争に参加。金を求めて戦いの火蓋が切られた。

アイアン・フィスト映画レビュー(感想・評論)

(C)2012 Universal Pictures
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グラン・マスターが、インテレクチュアルで格調高いカンフー映画だとしたら、アイアン・フィストは、何でもありのパワフルさと猥雑さと無国籍テイストがミックスされたカンフー映画だ。

主人公の鍛冶屋を演じるのは、監督等兼任するヒップホップアーティストのRZA。清朝中国の奥深い小さな村に黒い肌の鍛冶屋がいるという意表をついたアイデアに驚かされる。

彼の作る優れた武器を身にまとい、次々と現れる豪華キャストたちがダイナミックな戦いをほぼノンストップで繰り広げる。ところどころに現れる残酷描写も、それなりのアクセントになっている感じだ。

ラッセル・クロウは、怪しい謎のイギリス人を嬉々として演じ、ルーシー・リューはきらびやかな娼館の主。武装組織の面々も、ベトナム出身のキックボクサー、カン・リーや、元WWE選手のデヴィッド・バウティスタ、エンド・オブ・ホワイトハウスの悪役を憎々しく演じた記憶も新しい、リック・ユーンなど錚々たるメンバーが揃う。

エネルギッシュで力強く、カンフー映画全盛時代へのオマージュがたっぷり入っているのがポイント。最初からパワー全開のため、少々入り口がわかりにくいものの、いつしか熱気に引きこまれてしまうだろう。

最盛期のツイ・ハーク映画から軽みと品を取り除き、グラインドハウス的B級風味を振りかけた作風に、どこかノスタルジックでもある。カンフー映画をとことん楽しんだ記憶が刺激されるからだろうか。

クエンティン・タランティーノのプレゼンツだけあって、『ジャンゴ 繋がれざる者』に入っていてもおかしくないシーンが、こっそり挟み込まれているところが微笑ましい。
(オライカート昌子)

アイアン・フィスト 作品情報・キャスト
2012年 アメリカ映画/95分/原題:THE MAN WITH THE IRON FISTS/監督:RZA/出演:ラッセル・クロウ(ジャック・ナイフ)、カン・リー(ブロンズ・ライオン)、ルーシー・リュー(マダム・ブロッサム)、バイロン・マン(シルヴァー・ライオン)、RZA(ブラック・スミス)、リック・ユーン(ゼン・イー)、デヴィッド・バウティスタ(ブラス・ボディ)、ジェイミー・チャン(レディ・シルク)、ダニエル・ウー(ポイズン・ダガー)、パム・グリアほか/配給:シンカ/R15+
渋谷シネクイントほか全国公開中
公式サイト http://ironfists.jp/