『君の声を聴かせて』映画レビュー 爽やかでいてグッとくる

韓国だけど韓国ではない。『君の声を聴かせて』は台湾映画『聴説』のリメイク、さわやかな風が吹き抜けるような作風は、一時期の台湾の青春映画そのものだ。まず中心となる、ヨンジュン(ホン・ギョン)、ヨルム(ノ・ユンソ)、ヨルムの妹のガウル(キム・ミンジュ)の三人がいい。姿よし、表情よし、ストーリーは抜群。最後にはグッと来る驚きが待っているけれど、その驚きの表現が自然なので作為を感じさせない。

ホンギュンは、大学の哲学科を出たけれど、何をしていいのかはっきりしない。一応就活はしているけれど、特技は手話ぐらい。実家の弁当屋の手伝いを頼まれ、しぶしぶスクーターで配達に出る。ところが、帰ってきたときの表情はニコニコだ。出会いがあった。しかも得意の手話を使える。

配達先のプールで手話を使って話していたヨルム(ノ・ユンソ)に一目惚れしたのだ。スクーターを通じて、連絡先を交換することもできた。だけどヨルムはあまりにも忙しい。オリンピックを目指す妹ガウル(キム・ミンジュ)を支え、勉強もしつつアルバイトに奔走している。ヨルムには恋をしている余裕はない。

手話を使う映画というと、日本映画で吉沢亮主演の『ぼくが生きてる、ふたつの世界』を思い出す。手話を使う両親のもとに生まれた息子が、聴こえる世界と聴こえな世界を行き来して考えたことを映画化していた。『君の声を聴かせて』にも象徴的なシーンがある。ホンギュンが耳栓をして、聴こえない世界を体験する場面だ。

『君の声が聞きたい』はピュアに見えるだけでなく、深い世界も顔をのぞかせる。テーマの一つが、”やさしさ”。信じて見守ることができるか。二人の間の障壁を乗り越えて、ピュアな初恋はどのように結実するのか。ひたすら爽やかな二人のかすかな表情の変化に見入ってしまう。

(オライカート昌子)

君の声を聴かせて 
9月26日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:日活/KDDI
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オリジナル映画:『聴説』(プロデュース:ペギー・チャオ/監督:チェン・フェンフェン)
監督:チョ·ソンホ『エンドレス 繰り返される悪夢』
出演:
ホン・ギョン『潔白』『コメント部隊』「悪鬼」「弱いヒーロー Class 1」
ノ・ユンソ『20世紀少女』「私たちのブルース」「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」
キム・ミンジュ「禁婚令:朝鮮婚姻禁止令」「コネクション」「アンダーカバーハイスクール」
2024年|韓国|韓国語|原題:청설(英題:Hear Me : Our Summer)カラー|1:1.85|109分|5.1ch|字幕翻訳:福留友子|映倫:G