ディズニーのお姫様系キャラクターは増え続けているけれど、お茶目だったり、いたずらっ子だったり、冒険好きだったりしても欠点は目立たない。好感が持てる理想的な女性がほとんどだ。人気キャラ候補なのだから当然のことだろう。
ところが、『アナと雪の女王』の二人のプリンセス、エルサとアナは、欠点が目立つキャラである。なんでも氷や雪に変えてしまう、呪いに似た魔力の持ち主の姉のエルサは、最初は宮殿の部屋にこもり、次に山にこもるというまるで現代のひきこもりである。
一方、妹のアナは、向こう見ず。先のことを考えない。たまたま出会った王子と、会ったその日に結婚の約束をしてしまうし、姉を迎えに行くため、雪山に夏の服装で出かけていく。危なっかしいことこの上ない。
『アナと雪の女王』は全米ではディズニー・アニメの記録を塗り替える大ヒットになったが、身近な主人公たちにも人気の理由があると思う。私たちもエルサのように、自分が持つ力を信じることができずに恐れて逃げてしまう時もあるし、アナのように熟考は飛ばして、心のままに行動してしまうこともある。一人の人間の中にいくつもの欠点がてんこもりになっている場合もある。
エルサが、自分の欠点を振り払うように歌う、アカデミー主題歌賞受賞曲『let it go』の場面は、みどころの一つで、魔法を思う存分に発揮して氷の宮殿を建てていく様子は、力強いシーンだ。
歌の最初の部分では、編んだ髪を解れさせ、肩掛けを羽織り、エルサは自信がなさそうな態度で、氷の階段をとぼとぼと登っていく。徐々に歌に後押しさせられるように、力を目覚めさせ、それに自身をゆだねていく。ついには、まばゆい氷の宮殿を実体化させながら歌い踊る。
そこで欠点を解消できれば最上の解決かもしれない。だがそうはならずに、エルサはさらに自分を閉ざす方向へ行ってしまう。課題の解決は、欠点を遥かに超えた高みからしか生まれないらしい。自分を犠牲にしてでも相手を救いたいという思いのように。
幸福は、欠点のありなしに関係ないのだと、さわやかに確認させてくれる映画でもある。二人の欠点こそが、物語の核になり、ストーリーを引っ張りドキドキさせてくれる。美しく散りばめられた雪の情景とリアルな登場人物たちが、映画体験を一層豊かにする。さすが、ディズニーと思わせてくれるところが嬉しい映画なのである。 (オライカート昌子)
アナと雪の女王
3月14日より全国2D/3D公開
アナと雪の女王 公式サイト http://www.disney.co.jp/movies/anayuki/