© 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. All Rights Reserved.
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『SHAME -シェイム-』など衝撃的で挑発的な映画を世に送り出してきたスティーブ・マックイーン監督が今回挑んだのは、歴史もの。

時代はリンカーンが奴隷解放令を公布する以前のこと。北部で仕事を持ち、家族を持ち、自由な人生を謳歌していた黒人男性が、ある日理由なくとらえられる。そして奴隷として売られてしまい、12年間奴隷として生きたありさまを描く実話の映画化である。

この作品の特徴は、見ている側に主人公の体験がストレートに伝わるバーチャルリアリティ的な映画ということに尽きると思う。

彼の体験する過酷な12年間の描かれ方は、衝撃的なシーンも含め、きわめて静かに淡々としている。だが、息づかいから行動の一つ一つまで圧倒的な現実感を持ってスクリーンからじわじわと染みだしてきて、私が実際に体験しているかのような感触をもたらす。

ふつう映画は、観客にそういう体験をもたらすことを目的にしているだろうし、世にたくさんある3D映画も、バーチャルリアリティ体験を強いてくる。

ところが、この映画で感じる現実感は、質が違う。12年間、奴隷になるということが、どういうことなのかが、主観的に感じられるのだ。客観的な傍観者の視点ではいられない気分になってくる。

時折差し込まれる、ゆっくりとした情景描写の効果なのだろうか。時間の経過を独特に描く手法の成果もあるに違いない。

そのバーチャルリアリティ体験は、主人公が感じていること、たとえば、怒りだったり、あきらめだったり、かすかな希望に揺れる心がストレートに伝わってくる。それだけでなく、彼らを苦しめる残虐きわまりない農場主の心の中にも入り込むことを可能にする。農場主が、実際には感じるのを拒否しているかもしれない凄まじいレベルの心の痛みや押し殺した怒りまで伝わってくるような気がする。

映画の楽しみ方はいろいろあるけれど、この映画は映画というものの可能性を徹底表現した究極の進化系と考えてもよさそうだ。 (オライカート昌子)

それでも夜は明ける
2014年3月7日(金)TOHOシネマズ みゆき座 他 全国ロードショー
公式サイト  http://yo-akeru.gaga.ne.jp/