『We Live in Time この時を生きて』映画レビュー タイミングの絶妙さが喜びを生む

『We Live in Time この時を生きて』には、ピュアな優しさがあって、映画的な喜びがある。喜びというと、誤解を招くかもしれない。『We Live in Time この時を生きて』には病と治療の話も出てくるからだ。

ただし日常のささいな美しさや輝きの場面の方が分量が多い。陽光、のどかな風、仕事場の喧騒の中の輝き。普段だったら見逃してしまいそうな、世界の細やかな断片が強烈な印象を残す。

『We Live in Time この時を生きて』のメインキャラクターは、アルムート(フローレンス・ピュー)。イギリスでオーナーシェフをしている。彼女がトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)と出会う。二人の人生で起きるいくつかの曲がり角が機能的にシャッフルされ配置されている。

『We Live in Time この時を生きて』の特徴の一つは、映画の見せ方の上手さだ。トビアスが紙にサインをしようとして、ペンのインクがなくなる一連のシーン。間の悪さが続くけど真面目に見せてくれるので、くすぐったいような楽しさが襲ってくる。そしてこの先に待っているのは人生を変える出会いだったりする。

シーンの妙、タイミングの絶妙さが散りばめられている。映画はこうでなくっちゃって思わせるほど冴えている。さすが『ブルックリン』のジョン・クローリー監督だ。丁寧さが伝わってくるのがいい。

シーンや配置とともにインパクトを感じさせるのが、挑む姿勢を堅持するアルムートのカッコ良さ。自分がやりたいことを明確に知っていて何がやってこようと、それは変わらない。アルムートを極め付きの存在感と分厚さと自信。それをフローレンス・ビューが柔らかく時に強く演じ切る、こんな素敵な女性に出会えたことを素直に喜びたい気分になった。

トビアス演じるアンドリュー・ガーフィールドは、自然体を駆使してアルムートの輝きを支える役に徹している。それはそれで彼が演じた『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのピーター・パーカーを思い出させてくれて、微笑ましさがある。

(オライカート昌子)

We Live in Time この時を生きて
6 月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
配給会社:キノフィルムズ
監督:ジョン・クローリー(『ブルックリン』)
出演:フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド
2024 年|フランス・イギリス|英語|108分|カラー|スコープ|5.1ch|字幕翻訳:岩辺いずみ|映倫区分:G
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ