『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』映画レビュー エネルギーと優しさのアドベンチャーアクション

『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』は、今こそ見たい必見映画だ。常識外れのアクションアドベンチャーは予想の斜め上を行く。リアルさと誠実さも映画をしっかり包んでいるから安心印は万全。エネルギーと優しさの分量は相当なものだ。

主人公のテルマは、タイトル通りの93歳。普段は家でのんびりと刺繍をしたりして過ごしている。少し前に夫を亡くし、今は一人暮らし。たまにやってくる孫のダニエルは献身的で、パソコンやスマホの使い方も詳しく教えてくれるので、新しい機器にも臆せず挑戦しいている。そこがテルマの凄いところだ。得意ではないし素早くもないけれど、そこそこ使える。そこが大事だったりする。

アドベンチャーアクションがスタートするのは、ダニエルの名前を騙った電話がかかってきたところから。オレオレ詐欺だ。ダニエルが交通事故を起こし、保釈金が一万ドル必要だと言ってきた。

車の免許を返納しているテルマはなんとか郵便局へ向かい、一万ドルを送ってしまう。それが詐欺だと知って落胆したが、行動を起こすべきだと、心を決める。ダニエルも娘夫婦も知るよしがない。テルマが『ミッションインポッシブル』シリーズのトム・クルーズに影響されているなんて。

主演のテルマを演じるジューン・スキッブは、1929年生まれの戦前派。今年のアカデミー賞授賞式のプレゼンターもしていたのでおぼえている人もいるかもしれない。アカデミー賞での縁と言えば、2013年のアレクサンダー・ペイン監督作品『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』で、アカデミー助演女優賞にノミネートされている。

舞台女優としてキャリアを積み、映画初出演が61歳の時の1990年。ウディ・アレン監督の『アリス』。そしてキャリア70年目にして『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』で初主演を勤めることになった。

年齢を必要以上に意識する時代は終わったのかもしれない。年だからという言葉をよく言ってしまう人には考えを広げるチャンスがある。年齢は個人差が大きい。心も体も。

ところで、『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』は男性陣にも注目だ。テルマに否応なく引きずられていく友人ベンの役にリチャード・ラウンドトゥリー。『黒いジャガー(71/ゴードン・パークス監督)』で主演のジョン・シャフトを演じた。本作が遺作。

マルコム・マクダウェルも出演している。言わずと知れた『時計じかけのオレンジ(1971/スタンリー・キューブリック監督)』の主演俳優だ。

(オライカート昌子)

テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ
© Courtesy of Universal Pictures
6月6日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:パルコ ユニバーサル映画
監督・脚本:ジョシュ・マーゴリン  
出演:ジューン・スキッブ、フレッド・ヘッキンジャー、リチャード・ラウンドトゥリー、パーカー・ポージー、クラーク・グレッグ、マルコム・マクダウェル
2024年/アメリカ・スイス/英語/99分/シネスコ/5.1ch/カラー/原題:Thelma/日本語字幕:種市譲二
配給:パルコ ユニバーサル映画  公式サイト: universalpictures.jp/  公式X: @Thelma_jp