『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』映画レビュー 背中は友情を支えあう

『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』のポスター画像や写真は独特だ。二人の主人公、ジェヒ(キム・ゴウン)と、フンス(ノ・サンヒョン)は顔を合わせていない。肩を並べることもなく、視線も違う方を向いている。それなのに二人の関係が伝わってくる。それが不思議だ。

スタートはビルの屋上。ジェヒは華やいだ花嫁姿でタバコを吸っている。そこに堂々と現れるフンス。声を上げたくなるぐらい印象的で綺麗なシーンだ。

時は遡り、二人の性格、二人の馴れ初めからのエピソードが次から次へ、ふわっと浮き上がるようにみずみずしく描写されていく。微笑ましいシーンもあれば、心苦しいものもある。

若き日々は素晴らしかった、良かったと思うのはそれが過ぎてしまったからだ。ちょっと思い出してみてほしい。いかに神経を張り詰めて生きていかなければなならなかったか。胸が詰まるような時間もあった。競争もあったけれど、それなりに楽しい時間もあったから、辛い部分は、あまり思い出したくないかもしれない。

そんな日々が『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』にはたっぷり入っている。スムースに軽快におしゃれに描かれているから、日々の難しさはそれほど強調されていないけれど、よく考えれば相当きついはずだ。

ジェヒもフンスも周囲から見れば少し異質だ。ジェヒは親との関係に問題があって、精神的に頼るものなく一人で生きてきた。フンスは自分の性的傾向を隠すことでやっと生きてきた。ふたりとも自分をわかっているから群れから離れて生きる。二人の間にゆっくり芽生える友情は気高く温かい。

人と違っていてもいいかもしれない。合わせなくても生きていける。そして少しづつ強くなる。『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は、人生に欠かせない良好な人間関係について必要なポイントを優しいタッチで教えてくれる。ところで『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』のポスターや場面写真が向き合っていないのは、背中を預けられる関係を現しているのではないかなと、ふと思った。

(オライカート昌子)

ラブ・イン・ザ・ビッグシティ
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
6月13日(金)より全国ロードショー
配給:日活/KDDI
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2024 年/韓国映画/韓国語/原題:대도시의 사랑법(英題:Love in the Big City)/1時間58分/カラー/1.85:1/5.1ch/字幕翻訳:本田恵子
原作:小説『大都会の愛し方』 より「ジェヒ」(パク・サンヨン著、オ・ヨンア訳/亜紀書房)
監督:イ・オニ
出演:キム・ゴウン、ノ・サンヒョン
提供:KDDI
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