オリヴァー・ストーン監督は、それを映画でしかできない表現で料理してみせた。ドン・ウィンズロウ、なんのそのの自信がうかがえる。スタイリッシュで軽快。かつ残酷な犯罪サスペンスとなった。
中心になるのは若手二人。昨年『ジョン・カーター』や『バトルシップ』で頭角を表したテイラー・キッチュが、元特殊部隊の切れ者チョンを演じ、これから公開の『アンナ・カレーニナ』でアンナと恋に落ちるヴロンスキー役のアーロン・テイラー・ジョンソンは、平和主義の植物学者ベンを演じる。二人と共に住み、二人を愛しているオフィーリアを、ブレイク・ライブリーが演じている。
世界最高峰の品質を持つ”はっぱ”を開発したことで、百万長者となったチョンとベンの二人は、理想的で気ままな生活を送っていた。そこに二人を支配下におこうとするメキシコの麻薬組織が触手を伸ばしてくる。
そこから、二人と麻薬組織の争いは、チェスの一手で局面が変わっていくように、厳しい決断と選択の物語となっていく。平和を愛するベンも、その戦いの最中に、手を汚すことも厭わない人間に変わる。
のほほんと平和に生きてきた若者が現実の荒波に揉まれていくうちに、無垢な自分を失っていくストーリーなのだ。そしてそこには、とっくに高尚な理想も純粋さも失った、大人たちがいる。
映画のラストには、小細工的仕掛けがある。昨年の暮に公開された映画に、全く同じような仕掛けがある映画があった。その映画は、多分そのために評価がいまいちだった気がする。
野蛮なやつら/SAVAGESも、この映画の終わり部分の仕掛けを、是とするか非とするかで評価が変わるに違いない。わたしは、映画を面白くしてくれるなら、なんでもあり派だから、仕掛けは大いに賛成だ。(オライカート昌子)
野蛮なやつら/SAVAGES
2013年3月8日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー
オフィシャルサイト http://yabanna-yatsura.jp/