私が、生きる肌の画像
Photo by José Haro El Deseo
『ボルベール〈帰京〉』などのスペインの名監督、ペドロ・アルモドバルの新作。主演は『アタメ私をしばって!』以来のタッグとなるアントニオ・バンデラス。ティエリ・ジョンケの小説「蜘蛛の微笑」を原作に、亡き妻と娘の面影を求めて人工皮膚の実験に執念を燃やす形成外科医と、その”いけにえ”になった者の運命を描く。衣装はジャン・ポール=ゴルチエが手がけている。

ショッキングなポスターの印象を裏切らない内容。1959年の映画『顔のない眼』に『フランケンシュタイン』を足したような感じである。とにかく一時も目が離せない怒涛のサスペンスだ。まず、冒頭の全身ボディ・ストッキングの女性に驚愕。彼女は監禁されているらしい…何故?一方、どこかで講演中のバンデラス演じる外科医。彼が帰宅したところで、この女性の支配者はこの外科医なのだと分かる。部屋のドデカいモニターで彼女を監視。する外科医。一体、二人の関係は…?そんな謎めいた滑り出しに、どんどん引き寄せられていく。

やがて、物語は一旦ボディストッキングの彼女から離れ、外科医の過去へ。最愛の妻を失い、最悪の形で娘をも失ってしまった経緯。その出来事が外科医を狂気へと引きずりこむ。そして、完ぺきな皮膚移植の実験台にするためにある人物をターゲットにし、誘拐を実行する…。

一見関連性のなさそうな事柄がすべて結びつき、目を疑うような衝撃の展開に。異常な愛と戦慄のファンタジーはホラーにも転びそうだが、極上のエンタテインメントへと昇華している。外科医が妻に執着する描写がもう一つ不足していたが、あまりに濃すぎる内容に、それも許せてしまった。
(池辺 麻子)

私が、生きる肌
2011年 スペイン映画/120分/監督:ペドロ・アルモドバル/出演: アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス、ジャン・コルネット、ロベルト・アラモ セカ、ブランカ・スアレス、スシ・サンチェスほか/配給:ブロードメディア・スタジオ
5月26日(土)TOHOシネマズシャンテ、シネマライズ他全国ロードショー
公式HP:http://www.theskinilivein-movie.jp/